アムロは回避、スレッガーは開き直り…『機動戦士ガンダム』じわじわ来る“斬新なビンタ”シーン3選の画像
富野由悠季著『機動戦士ガンダム』小説第2巻(角川スニーカー文庫)

 アムロやシャアを筆頭に魅力的なキャラやモビルスーツ、そして数々のドラマが生まれた『機動戦士ガンダム』。実は、ちょっと視点を変えて見てみると、驚くほど「ビンタ」シーンの多い作品でもあった。

 ブライトから痛烈なビンタを食らったアムロが口にする、「二度もぶった。親父にもぶたれたことないのに!」というセリフはあまりにも有名だ。

 そんな『機動戦士ガンダム』で描かれたビンタシーンの中でも、今回は見返すほどにじわじわ来る、記憶に残る名シーンを紹介したい。

■アムロに避けられ一回転した地球連邦軍上官

 最初に紹介するのは第30話「小さな防衛線」でお目見えしたビンタシーンだ。地球連邦軍本拠地ジャブローに到着したホワイトベース隊は、初めて正式に部隊編成や所属部隊名の通達、各クルーに階級が付与された。

 その際、担当の連邦軍上官より「名誉の戦死を遂げたリュウ・ホセイは2階級特進、中尉に任命された。ほかの戦死者についても2階級特進が与えられている。以上」と機械的に告げられる。

 アムロは、自身を助けて戦死したリュウへの対応が気に入らず「2階級特進だけで、それだけでおしまいなんですか? 戦っているときは何にもしてくれないで、階級章だけで……リュウさんや他の人にありがとうの一言くらい……」と食ってかかった。

 そんなアムロに対し、激昂した上官はすかさずビンタをかまそうとするのだが、さすがニュータイプ、アムロは華麗なスウェーバックで回避する。ビンタを空振りした上官は一回転してしまい、顔を赤らめるというユニークな場面だ。

 上官は怒り「なぜ避けるか貴様。避けたら独房入りだぞ」と改めてアムロの右頬を引っ叩く。その後、フラウがアムロに対し「口が多すぎるのよね。たまに殴られるのもいい薬だわ」と皮肉を言いながら冷たいタオルを渡すのだが、アムロはなぜかぶたれた頬と反対側を冷やしているのも、じわじわ来るポイントだ。

■引っぱたいて「な?」と同意を求めるスレッガー

 次に紹介するのは第34話「宿命の出会い」でのビンタシーン。サイド6に寄港していたホワイトベースは、出港の際にジオンから攻撃されることを懸念していた。そこへミライ・ヤシマの婚約者であり、サイド6の監察官であるカムラン・ブルームが、盾になるため自家用の船で送ると提案する。

 しかし、婚約者としてカムランのことをよく思っていなかったミライは、「余計なことをしないでいただきたいわ」と一蹴した。ミライは過去のことでカムランを責め、2人は言い争いを始める。

 カムランの必死の申し入れを「結構です」と断ったミライ。すると、いきなり駆け寄ってきたスレッガー・ロウが「馬鹿野郎」と、ミライがのけ反るほど強烈に引っぱたいたのだ。これには、やり取りを静観していたホワイトベースクルーも「あっ」(カイ)、「ああっ」(ブライト)と驚きを隠せない。

 スレッガーはミライに「この人は本気なんだよ。わかる? そうでもなきゃこんな無茶は言えるか。いくらここが中立のサイドだからといったところで、ミサイル一発飛んでくれば命はないんだ。わかる?」と熱弁を振るう。

 返す刀で、スレッガーはカムランにまで説教をし始める。「あんたもあんただ。あんなにグダグダ言われてなぜ黙ってる」。これに対し、カムランは「殴らなくたって話せば……」と言ったが、至極当然の反論だろう。

 それでもスレッガーは「本気なら殴れるはずだ」「気合の問題なんだ」と持論を展開し、引っぱたいたミライに「な? 少尉」と同意を求めたのだった。

 カムランの言葉を借りれば「そんな野蛮な」と感じずにはいられないこのシーン。令和の時代では通用しそうにない、“昭和の男気”なのかもしれない。

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