■死の間際の言葉が未来を作った「トの康」

 最後に紹介するのは、ワノ国編で登場した「トの康」だ。“太鼓持ちのトの康”という異名を持つ彼は、道に迷っていたゾロと出会って行動をともにするようになる。

 いつも笑顔のトの康は、貧しい「えびす町」へ食料や薬などを分け与える心の優しい男で、町の人たちからも慕われていた。そして、ワノ国を救うための赤鞘九人男たちの作戦をなぜか気にかけているという一面も。このように当初は、謎多き人物として描かれていた。

 錦えもんが作成した「判じ絵」によって、敵であるオロチたちにその作戦に気づかれたとき、トの康は思いもよらぬ行動に出る。『ONE PIECE』のなかでも、今後語り継がれていくであろうこの名シーンは、ぜひ本作で確認していただきたい。

 最終的に命懸けのトの康の企みはオロチを欺くことに成功する。「ワノ国を救うための作戦」を水面化で引き続き動かすための英雄となり、これがのちの鬼ヶ島上陸作戦の成功へも繋がっていくわけだ。

 故人である光月おでんの回想シーンなどを見てみると、トの康がどれだけ偉大な人物でワノ国を腐らせたくなかったかがより伝わってくる。もちろんおでんもヒーローなのだが、今回は陰のヒーローであるトの康にスポットをあててみた。

 

 尊い犠牲というと、弟・ルフィを守って死んでいった「エース」を誰もが真っ先に思い浮かべる人は多いかもしれない。しかし『ONE PIECE』にはエースのように主役級ではなくても、たびたび誰かを守るために散っていった陰のヒーローたちが存在する。

 あなたにとってのヒーローは誰だっただろうか? この記事が、恩人たちを振り返るきっかけになると幸いだ。

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