漫画やアニメでは凄すぎる能力や力を持つキャラが多く登場している。しかし、そんな中でも時折“普通で平凡”なキャラが混ざっており、凄いキャラに囲まれているからこその苦悩や努力が描かれていたりもする。
尾田栄一郎氏による漫画『ONE PIECE』に登場するウソップが良い例で、ただの嘘つきから始まったのに、ルフィたちと肩を並べて戦える存在になっている。今回はそんな凄い仲間に囲まれている、普通キャラの苦悩や成長シーンを厳選して紹介していきたい。
■『WORST』の冨永寅之助
まずは髙橋ヒロシ氏による『WORST』に登場する冨永寅之助だ。同作は、男子高校生のトップを決める男同士の熱いケンカが展開されるヤンキー漫画。そのため登場するキャラのほとんどが腕っぷしが強く、最強を自負するキャラばかりである。
だがそんな中にも普通の高校生もいるもので、その代表格が寅之助である。寅之助は主人公の月島花や迫田、武藤、藤代と梅星一家の住人として同じ屋根の下で暮らしているが、他の面々とは毛色が違う。中学生の頃はいじめられっ子で、不良に怯えながら日常を送っていたのだ。そのため初めて梅星一家と顔を合わせた場面では、ケンカをする際に恐怖心からカッターを手にしていた。
これに気づいたのが花で、「こんなもん使わなくたっておまえは変われるさ!」と諭されたことで寅之助は、前を向いて歩き始めるようになる。
そこからは不良に出会っても自然体で話したり、ラーメンを食べに行ったりして付き合うこともできるようになり、歩巳という親友もできた。もともと手先が器用なので、バイト先のボウリング場の店長からは「将来、プロになれる」と絶賛されている。
特にダーツには力を入れていて、何度も練習をすることでかなりの腕前となり、鈴蘭ダーツクラブを銀次と立ち上げるという成長を見せた。寅之助はケンカ以外でキャラを確立させた、非常に珍しい存在と言えるだろう。
■『今日から俺は!!』の田中良
“ケンカ最強”が正義のヤンキー漫画の世界では、時折こうしたキャラが登場する。西森博之氏による漫画『今日から俺は!!』では理子の幼なじみの田中良が登場するが、彼はケンカばかりしている三橋や伊藤とは違って運動も勉強も普通にこなしている普通の高校生だ。
理子の父親が指導する道場に通い合気道を身につけているが、体格が小さいこともあって力負けしてしまうことがほとんど。三橋らとつきあううちに不良の争いごとに巻き込まれるが、そこでも一方的にボコボコにされてしまう場面ばかり。だが彼のすごさはケンカは弱いが、絶対に相手に屈しないという信念の強さを持っているところ。いじめられている人や困っている人を見るとほっておけず、どんな巨漢やコワモテの不良相手にでも立ち向かってしまう男の中の男なのだ。
終盤では持ち前の気持ちの強さや合気道経験から、少しずつ善戦するようにもなり、開久高校の生徒2人を相手に軽く倒してしまうという感動的な場面もあった。そこには三橋たちの熱い正義感の影響も少なからずあり、読者としては彼の影ながらの努力を応援せずにはいられない存在だった。