■メインストーリーをクリアしてからが始まり!? シナリオ分岐の存在

 そして「ミステリー編」をクリアしてエンディングを見ることで、新しいシナリオをみることができるようになる。スーパーファミコン版で用意されたシナリオは「スパイ編」「悪霊編」「雪の迷路編」などの8種類。

 メインストーリーである「ミステリー編」とまったく異なるシナリオに、度肝を抜かれたファンも多いのではないだろうか。設定ががらりと変わるため、別のゲームのような新鮮な気持ちで何度もプレイできるのも嬉しいところだ。

 例えば、「スパイ編」では、なんと透以外の宿泊客やシュプールの従業員全員がスパイであり、スパイ同士の戦いに巻き込まれるという展開になる。銃撃戦や暗殺、色仕掛け……といったアクション要素の強いシナリオになっている。

 こうしたさまざまなシナリオを数多く盛り込むことができるのは、サウンドノベルゲームの面白さの一つといえる。1994年当時にここまでバラエティに富み、面白いシナリオを盛り込んだ『かまいたちの夜』のボリュームには、今プレイしてみても満足できるだろう。

■臨場感を一層際立たせる独特のサウンドとシルエット

 サウンドノベルゲームにおける重要な要素として、プレイヤーの没入感をいかにかきたてるかがあるだろう。シナリオがテキスト表示されるため、プレイヤーの想像力をかきたてるような世界観を演出を行わなければならない。その点において、『かまいたちの夜』の演出はとにかくすごい。

 最も有名なシーンは、「ミステリー編」での有名なフレーズである「こんや、12じ、だれかがしぬ」だろう。それまでの明るく和やかな雰囲気を一転させる、不安をあおるサウンドと、表示速度を遅らせたテキストが、見事に恐怖を演出している。当時小学生だった筆者はリアルで鳥肌が立ってしまった。

 サウンド、背景の画像、そして人型の半透明の青いシルエットなどの表現できる要素すべてをうまく組み合わせることで、リアルで鮮明な映像よりもプレイヤーの恐怖心をかきたてているのだ。

 恐ろしいのに、目を背けることができない奇妙な没入感を抱き、プレイヤーはテキストを目で追ってしまう。今から『かまいたちの夜』を始めようと思う読者がいるならば、その世界観を堪能できるようヘッドフォンをしてのプレイをおすすめしたい。

『かまいたちの夜』は、続編として『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』、『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』、『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』や、リメイク版として『かまいたちの夜 輪廻彩声』が発売された。

 現在の主流ハードでプレイすることが難しい状態になっているのは残念だが、サウンドノベルゲームの代表作の一つとして、今も記憶に残るソフトだ。

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