1985年から1986年にかけて放送されたテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』。『機動戦士ガンダム』に続くシリーズの2作目で、2005年から2006年には劇場版三部作としてリメイクされている。
本作は前作とは違い、MS(モビルスーツ)の変形機構や多種多様な武装が特徴的。主人公機体のZガンダムはもちろん、敵勢力でもアッシマーやガブスレイ、バウンド・ドックなどさまざまな機体が変形する。
しかし意外にもラスボスであるパプテマス・シロッコが乗る機体「ジ・O(ジオ)」はというと、変形もしなければ派手な武装もない。ジオングやキュベレイに比べると地味な印象だ。
そんなジ・Oが筆者は大好きだ。MSとしては異質なジ・O。その魅力を機体性能、武装、特殊システムの観点から紹介したい。
■鈍重な見た目と裏腹に当時トップクラスの機動性
ジ・Oといえば、そのどっしりとしたデザインが最大の特徴。反地球連邦組織エゥーゴのクワトロ・バジーナからは「ジュピトリスのダルマ」と言われるほどで、二等辺三角形のようなフォルムをしており確かに鈍重なイメージは拭えない。しかし、実際は本作でも屈指の高機動機。そのギャップがたまらないのだ!
ジ・Oは大推力の加速用スラスターを搭載しているため、MA(モビルアーマー)並みの推進力を持っている。そのうえ全身に50以上の姿勢制御バーニアが仕込まれ、三次元的な運動性能も有しているバケモノMS。
事実、最終決戦では主人公カミーユ・ビダン、クワトロ、アクシズのハマーン・カーンと激戦を繰り広げるが、ほぼ被弾していない。
ただ、ゲームにおいては鈍重な仕上がりになっている場合があり、筆者としては少し悲しい。
■撃つ!斬る!潔いまでのシンプルな武装
『機動戦士Zガンダム』では、Zガンダムのハイパー・メガ・ランチャーや百式のメガ・バズーカ・ランチャー、キュベレイのファンネルなど派手で強力な武装が数多く登場する。
ラスボスであるジ・Oが持つ武装もさぞ強力と思いきや、なんとビーム・ライフルとビーム・ソードのみ(小説版では小型メガ粒子砲も搭載されている)。前作のジオングでさえ有線式ではあるがオールレンジ攻撃をしていたので、初めてジ・Oを見たときは少し拍子抜けしたものだ。
しかし、今ではその潔さこそがシンプルでかっこいいと思える。ゴテゴテにすれば強いわけではない、シロッコらしさが垣間見える。さらに、ジ・Oといえば隠し腕による奇襲攻撃を忘れてはいけない。腰のフロントスカートに内蔵されたサブマニピュレータは、思いもよらない攻撃なので有用性が高い。
「人型=腕が2本」という先入観を逆手にとった、実にニクい武装といえる。このトリッキーな隠し腕攻撃は、小説版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』においてシャアが搭乗するナイチンゲールや『機動戦士ガンダムUC』のザクIIIに搭載されている。