■一般建材がいまや作品の代名詞に…『彼岸島』宮本明

 ここまで紹介してきた武器は、どれも本来の使い方と違いこそすれど、我々が「道具」として利用するなにかを活用していた。しかし、『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて連載された『彼岸島』では、もはや道具でもない「建材」を武器に戦うシーンが登場する。

 行方不明になった兄を探すため、謎の孤島・彼岸島へと辿り着いた主人公・宮本明だが、島を支配する吸血鬼たちと生存をかけた死闘を繰り広げていく。その際に登場するのが、『彼岸島』の代名詞として有名になっている「丸太」である。

 丸太を加工して使う……と思いきや、なんと丸太をそのまま担いで、ときには殴打し、ときには振り回して鈍器として活用するなど、対吸血鬼用の武器として凄まじい活躍を見せるのだ。

 身の丈ほどの丸太を振り回すのは大の大人でも苦労するはずなのだが、主人公の宮本明をはじめ、登場人物たちはいともたやすくこれを扱って見せる。軽トラの荷台に乗った明たちが「みんな丸太は持ったな!! 行くぞォ!!」と奮起するシーンは、『彼岸島』を象徴する非常に有名なシーンとして、ファンの間でも語り継がれている。

 本来は人間を喰らう吸血鬼との死闘を描いたホラー作品なのだが、丸太を振り回し怪物たちと渡り合うその姿は、読者の目には実にシュールに映る。ある意味で、こういった規格外な展開も『彼岸島』の読者たちを惹きつける一種の見どころと言えるかもしれない。

 

 印鑑にモップに丸太と、あらためて見返してもどれもこれも「武器」にはとても見えない意外な得物の数々だ。我々が日常生活で使い慣れている道具であるだけに、それを使ってキャラクターたちが戦う姿には思わず「そんな使い方が?」と驚いてしまう。

 誰しもが知っているディテールと、そこから発揮される意外な実力のギャップは強烈なインパクトとなり、読者の記憶にキャラクターたちの存在を焼き付けてくれるのだろう。

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