■銀行員の心情を見るのが楽しい『監査役野崎修平』
最後は原作:周良貨氏、作画:能田茂氏による『監査役野崎修平』(集英社)だ。
監査役に焦点を当てるというのが珍しかった本作。主人公・野崎修平は出向して出世コースから外されるも、本店に戻って役員待遇の監査役となる。
ここから野崎は京極頭取や武田専務、柳沢副頭取など実際の役員にいそうな難癖あるタイプたちと真っ向から闘っていく。予算もほとんどない閉鎖部署で味方も少ない状況のなか、顧客のために不正を許さず、真の銀行を取り戻すべく邁進する彼の姿勢に憧れたものだ。
当時、本作に影響され「銀行はそんなに不正をしているのか!」と、筆者も銀行員の友人に聞いたものだ。友人は言葉を濁していたが(いや濁すんかい……)、人間関係は漫画に近いものがあると言っていた。
この漫画の素晴らしいところは、何かと知識の勉強になる点だ。銀行の貸し渋りや不良債権の飛ばし、銀行合併、システム障害、総会屋との関係など、脚色している部分もあるだろうが、リアルっぽいところが面白かった。
野崎も不正をなくすことに躍起となっていたが、正義や信念だけでは行員が路頭に迷う可能性を懸念し、経営的視点を持って柔軟な思考になり成長していく姿も理想の上司像といえる。
現代社会はストレスが溜まることも多い。痛快なビジネスマン漫画を読むことで、社会人として現状を少しでも変えていける力を身につけたいものだ。