■「あざとさ」が同性ウケしない理由?『タッチ』浅倉南
国民的ヒロインの1人ともいえる『タッチ』(小学館)の浅倉南はどうだろうか。南と言えば、多くの男性たちを虜にした「ヒロインのなかのヒロイン」で、いまだに憧れの女性像に南を挙げる男性も少なくないほど有名だろう。
新体操が得意で勉強もできる美少女の南。学園のマドンナで、誰からも愛されている彼女だが、意外にも同性ファンからの評価は冷たかったようだ……。
彼女が同性ファンから敬遠される原因として多く挙げられていたのが、「あざとい」という意見だ。南は「〜だぞ」のように男の子っぽい語尾を使ったり、頬に人差し指の先を当てポーズを決めるなど、少々「ぶりっ子」をすることがある。そんな彼女の様子はとても可愛らしく映り異性からは好かれるのだが、同性ファンにとってはどうにも好感を持てない部分があると思う。
たとえば、南が達也に言っていた「南のファースト・キスなんだぞ。ありがたく思え。」というセリフなどからも分かるように、彼女は“自分が可愛いことを自覚しているのでは?”と思わせてしまう要素が強かったのも、災いしていただろう。
また、「どっちつかずに見えてしまう態度」も、彼女が同性ウケしない理由かもしれない。
双子の兄弟・上杉達也と和也、そして幼馴染の南を含めた三角関係も大きな見どころとなっている本作。南ははじめから達也を一途に想っていたが、双子の弟・和也からも言い寄られていた。彼女は自分のために甲子園に行こうと努力する和也の気持ちを知っていたが、彼を邪険にすることはできず、はっきりと拒絶することもなかった。
そんな彼女の態度が「どっちつかず」と捉えられてしまうことが多く、同性ファンからは「和也がかわいそう」という声もあったようだ。
南の「どっちつかず」の態度は、“3人の関係を壊したくない”という彼女なりの葛藤があってのことだと思うが、外野から見ていると“優柔不断”に見えてしまい、彼女にあまりいい印象を抱かない要因になってしまうのだろう。
彼女の魅力を挙げるとキリがなく、同じ女性として憧れてしまう南だが、一方で彼女のあまりに恵まれた環境は少し羨ましくもあり、同性としてなんとなく受け入れ難いキャラクターなのかもしれない。
ヒロインとして作品を彩ってくれる彼女たち。華やかな容姿や恵まれたスタイルは、多くのファンを魅了し、また優しい性格や前向きな発言は見る人に勇気を与えてくれる。
一方で、上記に挙げたように同性ファンからは受け入れ難い要素があり、人気に影響しているキャラクターもいるのも事実。しかし裏を返せば、さまざまな意見を寄せられるということはそれだけ彼女たちに魅力があるということでもあり、見る人の心を惹きつけるヒロインの特権かもしれないと筆者は感じた次第である。