『あなたのことはそれほど』『ホリデイラブ』も…狂気じみた行動や巧妙な裏工作に思わず鳥肌!! 不倫漫画で描かれた「ゾクゾクする怖いシーン」の画像
フィールコミックス『あなたのことはそれほど』第4巻(祥伝社)

 既婚男女の許されない恋を描いた“不倫漫画”。不倫をテーマにした作品には、背徳感のなかに純愛を描いたものもあれば、身の毛がよだつような狂気じみたものもある。嘘に嘘を塗り固め、欲望のままに不倫を継続する登場人物たち。今回はそんな不倫漫画のなかから、読者をゾクゾクさせる “怖いシーン”に注目して紹介していこう。

■エスカレートしていく夫の行動が怖い『あなたのことはそれほど』

 いくえみ綾原作の『あなたのことはそれほど』(祥伝社)は、「W不倫」を描いた作品だ。2017年にテレビドラマ化され、大きな話題となった。

 本作の主人公・渡辺美都は、中学生のころ占い師に「2番目に好きな人と結婚するといい」と言われたことが忘れられず、勤務先で出会った「2番目に好き」になった涼太と結婚する。

 それなりに幸せな生活を送っていた美都だが、ある日彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。それは、美都が中学時代に身を焦がすほどの恋をした有島光軌との偶然の再会だった。彼とは当時一度だけ関係を持ったものの、そのあとは気まずくなり疎遠となっていた。

「1番好きだった」有島との再会で、美都はあのころの焦がれるような恋情を思い出し、そのまま不倫関係に堕ちていく……。

 一方で涼太は美都が寝ぼけてつぶやいた“有島”という名前を警戒するようになり、何度も彼女の携帯電話を盗み見てはアドレス帳に名前がないか確認するようになる。対人関係においてタブーの行為を繰り返す涼太。そしてついに彼女の電話帳に“有島”の名前を見つけ、本格的に美都の浮気を疑い始めるのだ。

 そのあとの彼の行動は、読者を震え上がらせるものばかりだった。有島夫婦に偶然を装って接触したり、美都の親友に探りを入れたり……と、やりたい放題。美都を“運命の相手”と疑わない涼太は彼女への強い執着心を抱いており、愛情表現がどんどん歪んでいってしまう。

 美都はあまり嘘がうまい女性ではないこともあり、不倫を始めてから離婚を申し出るも、涼太はそれを頑として受け入れず「愛している」の一点張り。ついには不倫を容認してまでも執着しようとする彼の狂気に耐えられなくなり、美都は家を出てしまう。

 ここまでを見ると涼太の狂気的な様子が目立ってしまうが、考えてみると彼は純粋に美都を愛しており、ただ彼女と一緒にいたかっただけだとも思う。美都の心は戻らないと頭のどこかで分かっていても繋ぎ止めようとする涼太の笑顔に、胸が切なくなる作品だった。

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