■運命の人を手に入れるための執念『ホリデイラブ〜夫婦間恋愛〜』

 不倫相手を“運命の相手”と信じ、どんな手を使っても手に入れようとする女性が登場するのが『ホリデイラブ〜夫婦間恋愛〜』(講談社)。本作も「W不倫」がテーマとなっている作品だ。

 本作に登場する井筒里奈は、主人公の高森杏寿の夫・純平と不倫をしている。2人は出会い系サイトで出会うのだが、里奈は純平に本気の恋をしてしまった。里奈の結婚生活は、夫・渡の支配下で生活を送ることだった。まるで夫の持ち物のように支配される生活は苦痛でしかなく、そんな日々のなかで現れた優しくて頼もしい純平にのめり込んでいった。

 純平もまた、杏寿との平和で刺激のない生活のなかで湧き上がる新鮮な気持ちを抑えきれずに、ズルズルと関係を続けていく。しかし、浮気が発覚して杏寿や娘を失いかけたことで“家族の大切さ”を再認識。目を覚まし「一緒になりたい」と懇願する里奈を一蹴する。

 それでも純平と一緒になることしか考えていない里奈は、純平と杏寿を別れさせるため恐ろしい裏工作を始める。なんと彼女が考えた作戦は、“杏寿にも不倫をさせること”だった。

 里奈は黒井由伸という男性を用意し、名前から職業まですべて嘘で固め、杏寿が興味を持つように仕向けていく。杏寿の経営するネイルサロンへ客として潜入していた自身の義理の姉・麗華を利用して、杏寿に出会い系アプリをインストールさせ、計画的に2人を出会わせた。

 杏寿は1人の女性として認めてくれる黒井に、少しずつ惹かれてしまう……一線を越えることはなかったが、しかし、杏寿は黒井に“不倫現場の写真”を隠し撮りされ、その写真が里奈に渡ってしまうのだ。

 写真を純平に突きつけ、夫婦の仲を壊そうとする里奈。彼女はそのほかにも杏寿へ精神的な攻撃を仕掛けたり、純平の職場での命運を握って脅すなど、恐ろしいほど巧妙な手口を使っていく。

 このように里奈が周囲の人間を利用して、言葉巧みに仕掛けていく裏工作も見どころの本作。一貫して恐ろしいのは、里奈の純平への異常な執着心だろう。笑顔で人の心を壊そうとする里奈に、思わずゾクゾクした読者も多いだろう。

 

 感情に支配され、通常では考えられない行動を起こすことが多い不倫漫画の登場人物たち。“不倫”という許されない行為に堕ちていく人間や、それに振り回されて豹変してしまう彼らの根本には「相手への深い愛情」があることは確かである。しかしもっとも恐ろしいのは、その愛情が歪んでしまうことではないだろうか。

 不倫漫画を読むと、やはり“不倫”という行為は誰も幸せにすることができないもので、人の心を壊してしまうのだと再認識させられる。また、不倫に巻き込まれてしまった涼太のような人間には、少しでも救いがあることを願うばかりだ……。

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