■青春を謳歌している憧れの場所『天使なんかじゃない』の生徒会室

 矢沢あいの代表作でもある『天使なんかじゃない』(集英社)。本作に登場する「生徒会室」も魅力あふれる“居場所”だった。

 創立して間もない私立聖学園の生徒会副会長となった主人公・冴島翠。明るくクラスメイトの人気者だった翠は「エンジェル冴島」という愛称で親しまれていたが、彼女も普通の女子高生。恋愛や進路、友達関係など、心のなかに多くの葛藤を抱えながらも「天使のように」振る舞うよう努めていたのだ。

 生徒会長の須藤晃を好きになり、一筋縄ではいかない書記の麻宮裕子と友情を育んでいくうちに、翠の“天使なんかじゃない”素顔が見え隠れするのも本作の魅力だと思う。

 そんな彼女たちが多くの時間を共有した居場所が「生徒会室」だ。和気あいあいとさまざまな学園行事を企画したりするみんなの姿は、まさに青春そのもの。また、本作屈指の名シーンであるダンスパーティーから聞こえてきた曲「スタンド・バイ・ミー」に合わせて晃と翠が二人でダンスを踊ったのも、この部屋だった。

 生徒会役員として忙しい日々を送りながらも、片想いをしていた晃との恋を実らせて順風満帆な学園生活を謳歌していく翠の姿を見ていると、まるで自分が学生時代にタイムスリップしたかのような感覚になり、あんな生徒会室で過ごしたかったと思わず夢見てしまう……。

 

 矢沢あい氏の作品は、キャラクターたちのリアルな心理描写や目が離せなくなるストーリーも魅力だが、作画のデザイン性の高さも一目置かれる要素だ。

 作品に登場するおしゃれで憧れる部屋や隠れ家、そして心のよりどころとなるような温かい居場所も、彼女の作品の大きな見どころのひとつだと思う。

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