■テニスを楽しむ心が新たな扉を開く!『テニスの王子様』越前リョーマ

 体格的には恵まれておらずとも、身に着けた数々の技を駆使し強敵と渡り合っていく姿は、少年漫画におけるある種の「王道」ともいえる熱い展開ではないだろうか。『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『テニスの王子様』の主人公・越前リョーマは、まさにその典型例ともいえる。

 リョーマは152.5cmと小柄でありながら、力強くしなやかなプレイスタイルで「スーパールーキー」として注目を集めていた。クールかつ不敵な態度はほかの選手から敵意を向けられることもしばしばだったが、ことごとくを卓越した技の数々で退けていく。

 急角度でバウンドする「ツイストサーブ」や、数々のバリエーションを持つ「ドライブA~D」などは序の口で、過去の戦いの記憶から無意識のうちに技をコピーして放つ「無我の境地」といった人間離れした技をも身に着けていく。

 その進化はとどまるところを知らず、「テニスを楽しむ心」を極めたことで、「天衣無縫の極み」と呼ばれる力にすら辿りついてしまう。肉体からオーラを放ち、コートに立つその姿は、まさに選手としての限界を突破した姿といえるだろう。

 涼しい顔をしながらもテニスへの強く熱い思いを抱き続けた、今までの少年漫画の主人公とは少しテイストの違ったキャラクターではないだろうか。

 

 スポーツやバトルといった「戦い」において、小柄だから相手よりも不利か……といわれると、そう単純なわけでもない。速さや、技術や、力強さと、小柄でありながらもそれを補うために身に着けたさまざまな「武器」を携え、キャラクターたちは戦いへとのぞむのである。

 むしろ、彼らだからこそ手に入れたオリジナルな戦い方であり、これも一つの「個性」だといえるかもしれない。

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