■地味な女子が人気者と恋に落ちる『ハニーレモンソーダ』

 地味で冴えない女子が学校一の人気者と恋に落ちる……これは全女子がキュンキュンする少女漫画の王道の設定だろう。そんな王道ストーリーを描いたのが、村田真優氏の『ハニーレモンソーダ』(集英社)だ。

 “石”なんてひどいあだ名で呼ばれ、いじめられていた主人公の石森羽花。内向的な自分の性格を変えたいと思っていた彼女は、街で出会ったレモンソーダのような色の髪の毛をした三浦界に惹かれ、彼が志望していた八美津高校へ進学することに。

 新天地で生まれ変わろうとする羽花だが、派手な生徒が多い八美津高校で彼女は浮いた存在になりつつあった。そして追い討ちをかけるように、羽花をいじめていた主犯格の女子に再び目をつけられてしまう……。

 そんな彼女のピンチを救ったのが、学校のなかでも目立つ存在で人気者の界だ。あまり他人に興味を示さない“塩対応”の彼が冴えない羽花を気にかけていくという、少女漫画では“あるある”の展開が繰り広げられる。やがて2人は恋人同士となり、羽花は冴えないヒロインからクラスの中心人物へと成長する……というストーリーだ。

 これぞまさしく、時代を超えて繰り返される「少女漫画の王道」だろう。2021年には実写映画化もされている本作だが、世代を超えてこれからも多くのファンに愛される名作だと思う。

 

 少女漫画では幾度となく目にする「ありえないけど“あるある”」のストーリー。現実味がないと言ってしまえばそれまでだが、読者に夢を見させてくれるのが少女漫画の特権だとも思う。王道であるからこそ安心感があり、多くの読者に求められているのも確かではないだろうか。

 きっと、このような“あるある”が増えていくだろう少女漫画の世界。これからも、多くの女子をキュンとさせ、癒やし続けてくれるだろう。

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