■グッズ化もされた「キルアのセリフ」

 冨樫作品の中でよく話題に上がるのが、作中に登場する独特な「中二病感」を醸し出すセリフや技名。前々作『幽☆遊☆白書』でも飛影による「邪王炎殺黒龍波」まわりのかっこよすぎるセリフがいくつかあるが、それを『HUNTER×HUNTER』ではキルアが引き継いでおり、「クセになってんだ、音殺して動くの」は特に印象深いセリフだった。

 これはヨークシン編で、アジトを探して歩くキルアのその足音があまりにも小さいことに驚いたセンリツに対して放った一言だ。殺し屋一家であるゾルディック家で英才教育を受けたキルアは、物心がついたときから自然とこの歩き方が見についていたのだろう。あまりにもかっこいいセリフだが、実生活で我々が使うことはおそらく一生ない。

 このくすぐったいほどの中二病的セリフはネット上でも人気が高く、10月28日から東京・森アーツセンターギャラリーで開催中の『冨樫義博展 -PUZZLE-』ではこのセリフが描かれたスリッパがグッズとして登場している。『HUNTER×HUNTER』ファンにとってはなんとも胸熱な展開ではないだろうか。

 今大人になった人たちが懐かしさすら覚える、あの頃の「なんかわかんねぇけどカッケェ!!」と心躍ったワードたち。キルアのこのセリフに限らず、ヒソカの「伸縮自在の愛(バンジーガム)」やクラピカの「絶対時間(エンペラータイム)」など、『HUNTER×HUNTER』には思わず声に出して言いたくなる言葉が散りばめられているのだ。

■ギリギリアウト!?「ヒソカの行動」の数々

 これまで『HUNTER×HUNTER』では個性豊かなキャラクターが登場してきたが、中でも初期からとりわけ異彩を放ちっぱなしなのがヒソカだ。

 そう、とにかく彼があまりにもヤバい性癖の持ち主だからだ。ヒソカのぶっ飛んだキャラ性をあらわすエピソードは枚挙にいとまがないが、多くの読者が思い浮かべるのが天空闘技場編でのゴンとの対戦ではないだろうか。ヒソカがゴンをいたぶるこのシーンは、それまで読んだどんな少年漫画にも似ていない、彼の狂気を表現した最高のシーンの一つだと思っている。

 またグリードアイランド編では、まだ力をつけていく発展途上のゴンとキルアを「青い果実」と称し2人の後ろを歩きながらじっとりとお尻にフォーカス。3人で共闘したドッジボール戦後には、なまめかしく望遠鏡を構えながら「とても楽しいバトルを終えたばかりでさ」とつぶやく。思わず「これ少年漫画だよな……?」と確認したくなる描写の数々は、冨樫作品ならではと言わざるを得ないのである。

 いつも読者の予想の斜め上をいく『HUNTER×HUNTER』。同作のストーリーは、こうした「ちょっと口に出して言いたくなる」絶妙なワードチョイスや先の読めないキャラの動きによって、より色濃く展開されていく。そして思わずクスっと笑ってしまう描写が、シリアスなシーンの中に散りばめられている点も同作の魅力のひとつではないだろうか。

 現在本誌では総勢数百名による「暗黒大陸編」が進行中。長期休載期間中に離れてしまったという人も、笑ったりハラハラしたりしながら最新エピソードに追いついてみてはいかがだろう。

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