■アムロとシャアは戦闘中に直接会話をしていなかった

 以前、記号論の授業でシニフィアンとシニフィエについて教わった。ファーストガンダムの視聴経験では、シニフィアンである「サイド」のシニフィエが「スペース・コロニーの集合体」ということが私には理解できず、一般的な単語の意味の「側面」と捉えていたために、キャラクターが一体何を話しているのか分からないという事態が発生したと考えられる。

 こういうガンダム独自の単語について、兄に「知らずに見ても何を言ってるのかわからない」と話したら、「見ていれば分かるから見ろ」と、ひと言で片付けられてしまった。仕方がないので、黙ってキャラたちのハイコンテクストなやり取りを傍観しながら、『源氏物語』を古典の授業で学んだときのことを思い出していた。あれも平安時代当時の常識を教わりながらでないと物語の面白さが全く分からなかったものだ。

 そして、アムロとシャアが直接会話をしているわけではなかった、というのも個人的には驚きだった。

 シャアが「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」と言うと、アムロがコックピットで「やります。相手がザクなら人間じゃないんだ、僕だって」と語る。この流れに、「なんだか話がよく分からないな」と子どもの頃であれば思っていただろう。しかし、言われてみれば、敵軍同士で会話ができる状態は通信の機密に問題があるということなので、それはそうだなと納得した。

 主人公のアムロについてもいろいろと思うところはあった。フラウ・ボゥの避難指示を聞かなかったり、勝手にガンダムの極秘資料を読んで「すごい……親父が夢中になるはずだ」と興奮気味につぶやいたり、ブライトさんに感情をむき出しにしたり。最後まで疑問を呈していると、兄は「お前もアムロといい友達になれそうだな」とポツリ言い残して立ち去った。こうして、私の初めてのガンダム視聴は終わったのだった。

 

 インターネットがない時代、皆さんは初めてガンダムシリーズを見たとき、疑問に思ったことはどうやって解決していたのだろうか? 雑誌や友人との会話で補完していたのだろうか?

 筆者のように、何も分からないと思った方は、その都度詳しい人に質問しながらガンダムシリーズのウォッチパーティーをすると、新しい発見があるかもしれない。

 10月2日より始まったガンダムシリーズ最新作アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』も多くの人から好評を博している。今後もガンダムをたしなみつつ、展開を楽しみにしたい。

■番組情報
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(TBS系)
毎週日曜 17時より放送
公式サイト:https://g-witch.net/

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