■平凡に生きてきた勇気ある少年の死

 次は退場者の少ない第4部から、矢安宮重清こと重ちーだ。重ちーは主人公・東方仗助たちと、拾った高額当選の宝くじをきっかけに仲良くなった中学生。

 重ちーはスタンド使いとしても未熟なうえに普通の中学生でもあるので、命がけの戦いをするような動機や理由はない。しかし、「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う」という法則どおり、最悪のスタンド使いを引き寄せてしまう。それがラスボス・吉良吉影で、杜王町最悪の殺人犯だった。

 重ちーはその日、吉良と同じパン屋の袋を持っており、すれ違いざまにぶつかったタイミングで2人の袋が入れ違いになってしまう。これにより、重ちーは吉良に命を狙われることになる。

 欲深く、性格も決して良いとは言えない重ちー。だが、バトル経験がほどんどないにも関わらず「父と母」のため、そして仗助たちに吉良の存在を伝えるために命をかけて戦う姿を見ると、好きにならざるを得ないキャラだった。そんな彼が吉良の攻撃により爆死。中学生だからといって、なんら躊躇しない吉良の恐ろしさが分かる衝撃の展開だった。

■あまりにも唐突だったアバッキオの最期

 最後は第5部に登場するレオーネ・アバッキオだ。アバッキオの死はほとんどの読者が予想することができなかったのではないだろうか。その理由はあまりにも唐突すぎたからだ。

 ジョルノたちはボスであるディアボロの正体を探るため、彼の故郷・サルディニア島を訪れていた。アバッキオのスタンド「ムーディー・ブルース」は、その場所にいた特定の人物の動きをビデオテープのように再現する能力。「ムーディー・ブルース」のリプレイにより15年前まで遡り、ボスの正体を探ろうとしていた。

 だがディアボロはこの能力を知っており、自身の正体が暴かれることを恐れ同じくサルディニア島にきていた。そして彼のもうひとつの人格である少年「ドッピオ」を使って、アバッキオを殺しにかかる。

 アバッキオがひとりで「ムーディー・ブルース」を起動させて待機していると、近くで遊んでいた子どもたちのサッカーボールが、木へ引っ掛かってしまう。それを見たアバッキオが、ボールを取って子どもたちに返すと、まさかの一撃を受けて崩れ落ちた。

 子どもたちの中にドッピオが紛れ込んでいて、アバッキオを攻撃したのだ。「やはり 生まれ故郷はいい…ついてる」と子どもたちに紛れ去っていくディアボロの横顔。アバッキオは鋭く深い攻撃に声を上げることもできずに、そのまま息を引き取ることになる。読者もアバッキオが何の前触れもなく殺されてしまったことに驚いたはずだ。

 

『ジョジョ』で描かれる死はまったく先が読めず、だからこそページをめくる手に緊張が走る。2021年に『ジョジョリオン』が最終回を迎え、新シリーズ『JOJOLANDS(仮)』の開始が告知されている同作。予定調和ではないドラマで、ますます楽しませてほしいところだ。

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