■『逆襲のシャア』から漂う大人の男と人間臭さ
最後に紹介するのは、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から。側近のナナイ・ミゲルとバーボン・ウィスキーを傾けるシャアだ。
スイートウォーターで一夜を過ごす、バスローブ姿のシャアとナナイ。2人の空気感は、もはや完全に大人のそれである。アムロに抱き続ける対抗意識を指摘したナナイは、それを受けてララァのことを思い返すシャアに歩み寄る。
すると、シャアはグラスをナナイの胸元に押し当てるセクシーな展開に。シャアは落ち着いた言動を装ってはいるが、苛立っている様子もうかがえる。
立ち去るシャアからバーボンのグラスを受け取ったナナイもまた、部屋から出るシャアを見送ると、クェスに対する嫉妬心やシャアへの苛立ちをのぞかせた。
実はこのシーン、足元に注目するとナナイは裸足だが、シャアはスリッパを着用している。こうした細かい描写で、二人の微妙なすれ違いを表現しているのだろう。
大人の男であるシャアの人間臭い部分が、短いながらもしっかりと描かれた名シーンである。
ちなみに、シャアが飲んでいたバーボンとカシューナッツは「総帥の孤独」というセットで、ガンダムカフェの「めざせ全制覇!再現食祭」というイベントで再現されている。
ガンダムシリーズでは、漢たちがグラスを傾けるシーンが随所にあり、キャラの心情を表現するためにさまざまな演出が散りばめられている。今回はシャアに絞って紹介したが、こうした視点から楽しめるのもガンダムの奥深いところである。