1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載を開始して以来、今なお根強い人気からさまざまな広がりを見せている漫画『ジョジョの奇妙な冒険』。部ごとに主人公や舞台となる国、時代を変えて描かれる独特の世界観は、唯一無二のものとしてファンの心を掴んで離さない。
そんな『ジョジョ』だが、実は作者の荒木飛呂彦氏によって明かされた「裏設定」があることをご存じだろうか。今回は荒木氏がさまざまなメディアにて明かした、興味深い裏設定について詳しく見ていこう。
■憎めないキャラクター性はやはり魅力的…「第3部」ホル・ホース
『ジョジョ』といえば、とくに人気が高いのは特殊能力「スタンド」が初登場する第3部だろう。旅をする主人公・承太郎らの前に、DIOが差し向けた敵スタンド使いが立ちはだかるのだが、なかにはどこか憎めないキャラクターも登場する。なかでもホル・ホースは、ギャグテイストも混じった親しみやすいキャラクターとして描かれていた。
拳銃型のスタンド「エンペラー(皇帝)」を駆使するガンマンでありながら、「一番よりNo.2!」という信条を胸に、常に勝てる側につく……というスタンスを見せていたホル・ホースだが、実は荒木氏曰く、彼を「仲間にしようかと思ったりもした」そうなのだ。
「SJR(集英社ジャンプリミックス)」のスペシャルインタビュー内で明らかになったこの設定だが、結果的に“ホル・ホースの常にふらふらした立ち位置だと仲間にはならないだろう”ということから、あくまで敵としてのポジションを貫いたようだ。
荒木氏としてもホル・ホースは描いていて楽しいキャラクターだったらしく、“あと何回か登場させてあげたかった”と、インタビュー内で漏らしていた。もし仲間になっていたらどんな活躍をしていたのか、非常に興味深い裏設定である。
■殺人鬼という「悪」に徹させるために…「第4部」吉良吉影
第4部では舞台を日本に移し、杜王町で繰り広げられるさまざまな事件にスポットが当てられる。とくに物語終盤、暗躍し続けていた殺人鬼・吉良吉影と繰り広げる一進一退の攻防は、『ジョジョ』のなかでもサスペンス性の高い場面だ。
女性の手首に異常なまでの執着心を見せ、死体をスタンド能力で処理する徹底的な狂気を見せる吉良吉影だが、実は、彼がこのような性格に変貌した「きっかけ」となる裏設定が存在していたようだ。
吉良吉影は母親から非常に深い愛情を受けて育ったが、その愛情はどこかいきすぎた「虐待」ともとれる域に達してしまっていた。父親である吉良吉廣はそれを止められなかった罪の意識から、病死してなお、自身のスタンドで幽霊となり殺人鬼となった吉良に手を貸している……ということなのである。
なんとも考えさせられてしまう裏設定だが、小説家・乙一氏と荒木氏の対談での発言や「SJR」でのインタビューによると、これを書くことで吉良が「悲しい過去を持つ悪役」になってしまい、読者が彼に感情移入してしまう恐れがあったことから、没設定としたらしい。
吉良吉影という人物が「悪」に染まるきっかけとしては非常にリアリティがあるものの、たしかに殺人鬼としての見え方が大きく変わってしまいかねない裏設定だ。