子どもから大人まで幅広く愛される、藤子・F・不二雄氏の『ドラえもん』。ドラえもんが四次元ポケットのなかから取り出すひみつ道具は、これまで幾度となくのび太たちのピンチを救ってきた。約2000個とも言われるひみつ道具は、そのほとんどが藤子・F・不二雄氏のアイデアによるものらしいが「自分だったら四次元ポケットから何を出したいか」と、誰もが一度は夢想したことがあると思う。
「タケコプター」に「どこでもドア」など、生活を豊かにしてくれそうな道具が多くある反面、なかには使い道が非常に難しそうなものも少なくない。今回は、一見便利そうに見えて、使い道を間違えると残念な効果になってしまいそうなひみつ道具をいくつか振り返りたい。
■万能のようで危険すぎる「もしもボックス」
「もしも◯◯だったなら」と電話をかけるだけで、その「もしも」が本当のことになる「もしもボックス」。むしろこれだけあれば、ほかのひみつ道具はいらないのではないか?と思えるくらい、便利で万能だ。
ただ、このアイテムには実は重大な弱点がある。それは「もしもボックス」が未来を変えるひみつ道具ではなく、やはり「もしも」の世界を体験させる“実験道具”にすぎないことだ。
たとえば、誰かにプラモデルを買ってあげたい場合、「もしもボックス」を使ってプラモデルを買ってあげても、それは「もしも」の世界でしかない。つまり、人に何かをしてあげる場合などは、完全に自己満足の結果となってしまうのだ。
また、コミックス13巻「お金のいらない世界」は、“お金がないことが富”という価値観の世界を試してみる話なのだが、お金があることで窮地に陥る人々の姿が描かれている。これは道具としてはかなり危険な誤動作で、場合によっては使用者が死亡したり、世界が崩壊する危険性すらはらんでいるだろう。
もしもの世界を体験するという性質の関係上、自分で使わないといけないことや、紹介したように致命的な誤動作が起こり得るというリスク。それらを考えると「もしもボックス」は効果が疑わしく、迂闊には使えない。万能とはほど遠いひみつ道具なのかもしれないと思った次第だ。
■大人になってから役立つかも!?「アンキパン」
覚えたいことをノートに書き、そのページに「パン」を押し付け食べるだけで記憶できる「アンキパン」。子ども時代はもちろん、大人になっても「あったらいいな」と思う夢のひみつ道具だ。
しかし、これも使い方によってはそれほど便利な道具にはならない。コミックス2巻「テストにアンキパン」のように、テストに利用しようとする場合、ビミョーな結果になってしまう可能性は高いだろう。
「アンキパン」の一番大きなデメリットは、パンを食べなければいけないことだ。原作の描写を見ると「アンキパン」で覚えられる容量は1枚につき、ノート約1ページ程度だと推測できる。
原作ではパン1枚につき6つの計算式が書かれていたが、ざっくり考えて、たとえば掛け算九九を覚える場合、各段を1枚のアンキパンで覚えるとして9枚必要となる。九九を覚える時期である小学校低学年の子どもにとって、食パン9枚は結構な量だろう。
また、学年が上がるにつれて覚える量はさらに増え、複雑になることを考えると、毎日“アンキパン食”にしても厳しく、成長盛りの年代に使うには栄養面でもあまり良くなさそうだ。(もちろん、もっとびっしりと書けば効率は良くなるが……)
とはいえ、作中ののび太のようにお腹を壊したりでもすれば、食べ直しが必要となる。あくまで“一夜漬け”に使うのであれば、良いかもしれない。
それより、「アンキパン」を便利に使えるのは、むしろ大人になってからだろう。その日1日のスケジュールが書かれた「アンキパン」を毎朝食べれば、スムーズに行動ができそうだ。