■登場初期は小物感が漂っていた『幽☆遊☆白書』飛影
また初登場時は設定があいまいだったキャラもいる。冨樫義博氏の漫画『幽☆遊☆白書』の飛影は、再登場以降のイメージとは違い、登場初期は野蛮で粗暴な小悪党そのものだった。
飛影は、斬ったものを妖怪に変える降魔の剣を使って螢子を人質にし、幽助をおびき寄せて待ち伏せをするなど卑劣な罠を仕掛ける。冷静時は「今のはふいうちのつもりか?」などクールな飛影っぽい口調だが、このときには「オレが何もしないで女を返すと思ったのか!? ボケがぁ」「さぁ楽しくなってきたな、今度は追いかけっこをしようか」など口から舌を出して挑発する、あまり飛影っぽくないセリフを吐いている。
この作戦は激怒した幽助にあっさり破られるが、この後には全身に邪眼を浮かび上がらせる少々グロテスクな見た目の「第2形態」も披露。これは後の戦いでは見せることはなく、このときだけの技だった。
それから四聖獣との戦いで再登場してからはまるで別人で、性格や雰囲気や言動から小物感が消え、まるでカリスマのような存在に。そして終盤にかけて幽助を支える重要な仲間となり、敵側からも恐れられるキャラへと変貌したのだ。
最初の軽口を叩いて卑劣な手を使っていた飛影はどこにいったのか? 飛影は本誌で行われた読者人気アンケートで2度にわたって1位を獲得しているが、この大幅な設定変更がなければ彼の人気はなかったかもしれない。
■最初はギャグ担当だった『ONE PIECE』ビビ
最終章に突入し、さらなる盛り上がりを見せている尾田栄一郎氏による漫画『ONE PIECE』。これまで1000人を超えるキャラが登場してきたが、アラバスタ編の重要人物だったネフェルタリ・ビビもまた、改めて振り返ると初登場時のイメージが違ったキャラだった。
ビビは、グランドライン突入編で、バロックワークスのエージェントである「ミス・ウェンズデー」としてルフィたちの前に現れた。このときのビビはまるでギャグ担当の三枚目キャラで、カルーとのボケとツッコミを繰り広げていた。ゾロに戦いを挑んだ際に見せた「魅惑のメマーイダンス」という、奇妙な動きで繰り出される必殺技もかなりふざけている。
そんなビビが実はアラバスタ王国の王女と判明してからは、ふざけた印象が一変し、一気にシリアスモードとなった。そして、ビビと協力して黒幕であるクロコダイルをルフィが倒したことでアラバスタ王国は解放。ビビは自分のこれからの人生を真剣に考えなくてはならなくなった。最初の頃のふざけた言動は、自分の正体を隠していた彼女なりのキャラづくりだったのだろう。
そして王女として国に留まるか、ルフィたちと一緒に新たな世界へと冒険へ出かけるのか……選択が迫ったとき、ビビはルフィたちを涙ながら見送る決断をし「いつかまた会えたら!!!もう一度仲間と呼んでくれますか!!!?」と叫んだ。ルフィたちが無言で左腕を高く挙げて仲間の証であるバツのマークを見せる『ONE PIECE』屈指の名シーンで、誰もが初登場のビビからは想像もできない展開だったと言えるだろう。
漫画やアニメのキャラは、状況や見る側の人間の反応から変化してもおかしくはない。今回は特にイメージが変わってしまったキャラを紹介したが、他にも激変したようなキャラはまだまだいるはず。そんなキャラを見つけてみるのも面白いだろう。