初登場時は常識はずれなところがありつつも真面目だったが、後半はギャグパートが増えていった『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の中川圭一。最初は人類の敵として登場したが、頼りがいのある味方として活躍するようになった『ドラゴンボール』のピッコロやベジータ。
これらのように、漫画やアニメには物語が進むにつれて役割やイメージがガラリと変わるキャラがいる。
たとえば、原作・雁屋哲氏、作画・花咲アキラ氏による漫画『美味しんぼ』の海原雄山は、それまで張っていた氷が溶けていくようにイメージが柔和になったキャラの代表格ではないだろうか。
雄山の初期イメージはまさにグルメの鬼。料理が気に入らなければ、食器ごとぶちまけて「作り直せ!」と要求。招かれた外国人料理人が会食で作った料理に、こうしたほうがうまいと勝手に食べ方を変えて周囲の人間に勧める。
息子である山岡士郎に対しては、過去のわだかまりもあってか虫けら扱い。士郎が雄山の対応に困っている料理人の代わりに、雄山が絶賛するような料理を出したとしても作ったのが士郎だと分かると、「こんなのは誰でも作れる」と掌返しをする始末。
こうした傍若無人な言動が数えきれないほどある雄山だが、士郎と栗田ゆう子の結婚あたりからイメージが変わっていき、まるで仏のようになっていった。以前のように、雄山に対して納得のいかない料理を出したとしても料理人が気づけるような配慮をしたり、士郎がそこに介入したとしてもあまり気にしない。むしろ士郎にもっと良い方法があると、気づかせるスタイルになった。
周囲を威圧してばかりだった雄山が、結婚から約40巻ほどたった頃には孫に顔をペシペシと叩かれ肩に乗られ、「チヨ、なんとかしろ」と口調はあいかわらずだが、まんざらでもない表情だった。初期の雄山しか知らない読者がそれまでの経緯をすっ飛ばして後半の彼を見たらさぞ驚くことだろう。