■『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』の冨樫氏も
続いては2022年10月24日、満を持して連載が再開された『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博氏。冨樫氏の連載デビューは1989年からスタートしたラブコメ作品『てんで性悪キューピッド』。連載をつかむ前も、『HORROR ANGEL』『狼なんて怖くない!!』など、ラブコメを描くことも多かった。
しかし今回紹介したいのは、1987年の『WJ増刊 少年ジャンプ Winter Special』で誌面デビュー作となった『とんだバースディプレゼント』。不良の高校生が天才博士の作ったゲームに巻き込まれるという話で、ゲームと現実が結びついてしまった世界でリアルRPGをクリアするために奮闘するという物語だ。
設定などが、『幽☆遊☆白書』後に連載された『レベルE』に似たものがあり、この読切に同作のルーツを感じることができる。それにしても、この頃からとにかく作画が美しくて驚いてしまう。
最後は、『NARUTO-ナルト-』が大ヒットした岸本斉史氏。岸本氏は1999年からスタートした『NARUTO』が初連載作品だが、その前年に一度だけ『ジャンプ』本誌に『カラクリ』(1998)という読切漫画が掲載されている。
防衛庁の元に結成された「カラクリ隊」が小隊長の動物とともに人体兵器・ロイドと戦うという物語で、随所に岸本氏こだわりの世界観が見られる。『NARUTO』に比べるとやや複雑で、作中の説明量も多いのが印象的だ。『NARUTO』連載にあたって、ターゲットとなる層を少し下げて老若男女が夢中になれる世界観にしたのかもしれない。
人気漫画家たちはこうしたさまざまな紆余曲折を経て人気作品を生み出した。そんな努力が滲み出ている、今では貴重な読切漫画たち。これを読めば、代表作がもっと奥深く楽しめるのではないだろうか。