2022年10月よりアニメ放送が開始した『チェンソーマン』。作画の美しさで評判を呼ぶMAPPAによる制作で、アニメのエンディングテーマを担当するアーティストが毎週変わるという異色のスタイルも放送前から大きな話題を集めた。
同作は、「チェンソーの悪魔」に変身する力を手に入れた少年・デンジがさまざまな敵と戦いを繰り広げるというダークな作風で、作中にはグロテスクな表現も多数登場する。
原作者である藤本タツキ氏の前作『ファイアパンチ』(2016-2018)も、炎に焼かれながら生き続ける青年を描いた衝撃的な復讐劇で、両者には作風にいくつかの類似点が見られた。
しかし、藤本氏が連載をつかむまでには、上記のようなダークな作品だけでなく、さまざまなジャンルの読切漫画を描き上げている。
たとえば、2014年に『ジャンプSQ.19』13号に掲載された『恋は盲目』はギャグ漫画だ。生徒会長が意中の女の子に告白しようとするが、先生や強盗、果ては宇宙人の邪魔が入りなかなか告白できないという内容。ファンタジー要素がなくギャグテイストの作品は藤本氏にしては珍しいのではないだろうか。
他にも同年『ジャンプSQ.19』14号掲載の『シカク』は、何千年も生きて退屈な吸血鬼が、常識を理解できない殺し屋の少女・シカクに自身を殺すことを依頼するというストーリーだ。こちらは、その世界観にどこか現在に通じる藤本イズムを感じることができる。
そして、『ジャンプSQ』2015年8月号に掲載された『予言のナユタ』。こちらは世界を滅ぼすと予言されて生まれたナユタとその兄の関係を描いた物語で、なんとこのナユタは『チェンソーマン』第1部のラストに登場している。
『チェンソーマン』との関連や藤本氏のルーツが気になる人は、公式YouTube『ジャンプチャンネル』に『予言のナユタ』のボイスコミックが配信されているので、ぜひ見てもらいたい。