■憧れのお姉さんから豹変したカテジナ・ルース
最後に紹介するのは『機動戦士Vガンダム』のカテジナ・ルースだ。序盤は、気が強いものの良識的なキャラだったカテジナ。第5話『ゴッゾーラの反撃』では、戦いに巻き込まれていく主人公ウッソ・エヴィンに対し、「怖い人だけにはならないでね。ウッソ」と声をかけていた。
ウッソに出撃を頼むレジスタンスに対し、「この子はこの戦争には関係がないんです。殺し合いは大人たちだけですればいいんですよ」と13歳で戦争に身を投じるウッソを守る様子も見られた。
そんなカテジナが“怖い女”の片鱗を見せるのは、クロノクル・アシャーに惹かれ、マリア主義に傾倒、MSのパイロットとして戦場に出るようになってからだ。
第27話「宇宙を走る閃光」でビームライフルを乱射し、多くの民間人を巻き添えに虐殺すると、第31話「モトラッド発進」ではウッソの母ミューラ・ミゲルを人質にするというとんでもない行動に走った。
極めつけは、第49話「天使の輪の上で」。カテジナは、ガンダム史上まれに見る残忍な作戦を行なう。ウッソのV2ガンダムに対し、女王マリアの近衛師団ネネカ隊に白兵戦を挑ませると、次々とネネカ隊が戦死していく中、ウッソの味方機であるガンイージに搭乗し、だまし討ちを図ったのだ。
戦争という魔物に取り憑かれ、多くの罪を犯したカテジナは、最終話で報いともいうべき業を背負うことになった。
女性キャラが数多く登場するガンダムシリーズには、“怖すぎるお姉さま”がたびたび出現する。それは戦争のリアリティーや極限状態における心理状態にこだわるがゆえの描写であり、ガンダム作品がファンの心をつかんで放さない魅力の一つとも言えるだろう。テレビ放送中の新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』にもそんな女性キャラが誕生するのか、楽しみである。