1986年にファミリーコンピュータ用ソフトとして誕生したゲーム『ドラゴンクエスト』。以降、ナンバリング作品では、2004年のPS2用『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われた姫君』から3Dが採用されるなど、グラフィックは常に進化を続けている。
ハードの進化にともなってグラフィックが美しくなっていくのはもちろん大歓迎だが、かつてのゲームではテキストや演出によってそれが存分に補われており、ゲーム内にどのような世界が描かれているのか想像が広がったもの。たとえば同シリーズではガスが噴出する荒廃した炭鉱の村があったり、無惨な結末を迎えるキャラクターが登場したりといったエピソードがあったが、ドット絵からでも十分にその光景が想像できた。逆に、過去の名作が現代の最新技術で蘇った場合、あまりのグロさにかわいそうになってしまうパターンも『ドラクエ』の場合はあるのではないだろうか。
『ドラクエ』のナンバリング作品において、2000年発売のPS用『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』は特に陰鬱なストーリーが多く、オリジナルの設定をそのまま美グラフィックでリメイクするのはためらわれるような設定がいくつかある。『7』は過去にニンテンドー3DSからリメイク版が発売されているが、最新機で甦ったら鮮明に見たくないようなシーンが少なくないタイトルでもある。
そこで今回は『ドラクエ7』から、筆者が思う最新グラフィックで再現してほしくないサブキャラたちの哀しくも恐ろしさを感じる設定を振り返りたい。
■死後も看病し続ける悲しきロボット…「からくり兵のエリー」
フォロッドにあるからくり研究所で、たった1人、自身の作り主であるゼボットの看病を続けるのが、からくり兵のエリーだ。エリーは、高度な知能をもち、花を愛でることもできる。そんなロボットに、ゼボットはかつて亡くなった自分の婚約者だったエリーの名をつけたのだった。
しかし、看病と言ってもゼボットは数百年も前に亡くなり、すでにしかばねとなっていた。エリーは彼が死んでいるということが分からないため、ただひたすら彼のためにスープを作り、ベッドにいるしかばねにそれを運び続けていたのだ。
このシーンが美グラフィックでリメイクされたら、しかばねにスープを運ぶロボットに何とも言えない恐怖を感じてしまうかもしれない。事情を知ったあとは、とても哀しい話であるがゆえに、その光景が記憶に残り続けるだろう。