■溶かされてもなお生かされ続ける恐怖…「ラット」
「スタンド」を使うことができるのは、なにも人間だけに限らない。なかには野生動物でありながら偶然にもスタンドの力に目覚め、主人公たちと激闘を繰り広げたキャラクターも存在する。
第4部に登場する「虫食い」と呼ばれるドブネズミは、主人公たちを苦しめた強敵だ。その能力だが、スタンドから発射される「毒針」によって攻撃した対象をどろどろに溶かしてしまうというもの。
作中ではこの能力を利用し、ライバルであるほかのドブネズミを複数溶かし固めており、なんともおぞましい代物を作り上げていた。さらに忍び込んだ家に住んでいた老夫婦を溶かして冷蔵庫に保存するなど、生理的にもなかなかきつい描写が展開される。
見た目的にもかなりえげつないが、標的は溶かされてからもなおしばらくは生きていることを考えると、ぞっとしてしまう能力である。
■反逆への報復は常に残酷に…「ソルベ」
第5部では主人公・ジョルノたちの前に、組織の反ボス派ともいえる精鋭部隊「暗殺チーム」の面々が立ちはだかり、激闘を繰り広げた。
暗殺チームももともとはパッショーネの一員だったのだが、彼らが反旗を翻したその理由となる事件が、屈指の凄惨シーンとして描かれている。
暗殺チームにはソルベとジェラートという二人組の構成員がいたのだが、組織では禁忌とされるボスの正体を調べようとしたため、報復として殺害されてしまう。その際、暗殺チームのメンバーには“当てつけ”として、なんと「輪切りにされたホルマリン漬けのソルベの死体」が贈られてくるのだ。
もちろんこれには「反逆も詮索も許さない」という脅迫の意図が含まれているのだが、殺しのプロである暗殺チームの面々も、惨い仲間の姿に言葉を失っていた。人間を輪切りにして額に入れて贈るという狂気的な発想が生み出した、屈指の残酷シーンである。
『ジョジョ』の作中にはさまざまなテイストの凄惨シーンが登場するが、バトルによる負傷や能力が生み出す特殊な現象など、その理由もさまざまである。
さながらバトルとホラーの融合体ともいえる『ジョジョ』ならではの特徴であり、それぞれのシーンが見ている者の心に強烈な印象を焼き付ける。これもまた、作者である荒木飛呂彦氏の卓越した画力がなせる業なのかもしれない。