■将校でありながら前線でその身一つになるまで戦う

 スレッガーを死に追いやったジオン公国、宇宙攻撃軍司令のドズル・ザビも名シーンを遺している。階級でみるとギレン・ザビに次ぐジオン軍の中将である彼も、ギレンやキシリア・ザビのように政治に関与することなく、武人として戦い抜く姿がかっこよく、強く印象に残っている。

 司令という立場から前線に立つことは少ないが、劣勢に陥ったソロモン攻略戦では妻子を避難させつつ、試作MAのビグ・ザムで出撃。戦艦を一撃で沈めるなど、圧倒的な破壊力で連邦軍を恐怖に陥れた。しかし、、前述のとおり、第36話「恐怖!機動ビグ・ザム」で、スレッガーの命を懸けた特攻がきっかけでガンダムに撃墜される。

 機外に脱出したドズルは対人用のライフルをガンダムに発射し「やられはせんぞ!やられはせんぞ、貴様ごときに、やられはせん! ジオンの栄光、この俺のプライド、やらせはせん、やらせはせん、やらせはせんぞー!」と戦う姿勢を貫く。その気迫に気圧されたアムロは、ドズルの背後に悪鬼のようなオーラを見るほどだ。ビグ・ザムの爆発で戦死したものの、ドズルの覚悟には鬼気迫るものがあった。

 

『ガンダム』シリーズでは、無名なキャラクターも含めて多くの人物が戦死する。今回紹介したように強烈な印象を視聴者に与えて物語から退場するパターンも多いが、なかには有名なキャラクターでもセリフがなく、あっけなく死んでしまうケースも。どちらの死も際立つのは戦争の悲惨さ。『ガンダム』シリーズならではの戦争の「リアル」がそこにあるといえるのではないだろうか。

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