■残忍さやサイコ感はまさに奇術師…『ダイの大冒険』キルバーン

 わかりやすい見た目のそれとは一線を画すのが、『ダイの大冒険』のキルバーンだ。その残忍さやサイコ感から醸し出される不気味さは、まさに仮面をかぶった奇術師そのものである。

 キルバーンは大魔王バーンの側近の一人であるが、実は冥竜王ヴェルザーがバーンを殺すためによこした刺客(コードネーム「KILL VEARN」)であり、バーン自身もそのことを認知したうえで側近として迎え入れているという異質な存在だ。

 彼の残忍さはその思考にあるだろう。ただ殺すのではなく、いかに弱者をいたぶりながら苦しめて始末するかに喜びを感じる、いわゆる“快楽暗殺者”なのだ。

 彼の武器の一つである「死神の笛」は、五感を鈍らせ体の自由を奪う特性を持っている。相手をいたぶりながら絶望させて倒すという、残忍なキルバーンにピッタリの武器であるが、そのこだわりこそが逆に仇となり、戦闘時の判断を鈍らせて決定的なチャンスを逃してしまうことも。

 とはいえ、戦闘中に死んだふりをしたり、壁のなかに隠れたり、さまざまなトラップを仕掛けていくさまは、まさに奇術師そのもの。とくに2020年のアニメバージョンでは狂気じみた雰囲気がそれまでよりも色濃く出ているので、そこもあらためてチェックしてみてほしい。

 

 作中で圧倒的に“異質”な存在感を放つ「奇術師キャラ」。作品によって違いはあれど、共通して言えるのはどのキャラも恐ろしいほどの惨忍さを持ちながらも、非常に魅力的に描かれているという点ではないだろうか。

 さまざまな作品に登場するトリッキーな奇術師キャラたちから、これからも目が離せない。

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