■『風都探偵』特撮から漫画、アニメ、さらに舞台へと活躍の場を広げる“二人でひとりの仮面ライダー”

 また現在放送中のアニメ『風都探偵』でも三条氏ならではのキャラクターが魅力を放っている。

 同作は、三条氏が脚本を手がけた2009年放送の特撮ドラマ『仮面ライダーW』の続編で、原作漫画が現在『ビッグコミックスピリッツ』で連載中。超常現象が頻発する街「風都」を舞台に、私立探偵・左翔太郎と「地球(ほし)の本棚」を使用できるフィリップが、「2人で1人の仮面ライダー」として戦う物語。主演の翔太郎を桐山漣、相棒のフィリップを菅田将暉が演じて両者の出世作となった平成仮面ライダー11作目となる作品だ。

 筆者が注視するのが翔太郎の在り方なのだが、その理由は作中での彼が『ダイの大冒険』のポップのような立ち位置だからだ。

 翔太郎にはフィリップのような特殊能力や照井竜のようなエリート刑事の肩書や因縁もなく、幼い頃より探偵・鳴海荘吉に憧れ続けるいわば“普通”の青年。だが、どんな困難にも食らいつき諦めない姿勢が場面場面で周囲の成長や変化を促し、そこがポップと重なるのだ。 

 2022年12月からは舞台『風都探偵 The STAGE』が予定されており、脚本監修として三条氏も名を連ねている。雑誌連載の漫画やアニメと併せ、これからも目が外せないコンテンツ作品になりそうだ。

■『獣電戦隊キョウリュウジャー』「荒れてるぜぇ、止めてみな!」子どもに人気の恐竜をモチーフに取り入れた王道戦隊モノ!

『仮面ライダーW』のように、三条氏は漫画の原作・脚本などの他に「仮面ライダーシリーズ」や「スーパー戦隊シリーズ」などの特撮ドラマの脚本も手がけており、2013年より放映されていた『獣電戦隊キョウリュウジャー』も代表作のひとつとして挙げられる。

『キョウリュウジャー』ではテレビ全48話と劇場映画2本、放送終了後の「Vシネマ」や「ファイナルライブツアー」のステージ脚本、さらにキャラソンの作詞まで手がけており、三条氏ならではのキャラや物語をたっぷり堪能できる。当時の東映公式サイトでは、三条氏の描き下ろした「最終回のつづきのお話」や「100年後のキョウリュウジャーの物語」が閲覧できた(※現在は閲覧不可)。

 同作は、宇宙から飛来したデーボス軍から地球を守るため、賢神トリンの元に集められた5人の若者がキョウリュウジャーに変身して戦う物語。本作で筆者が注目したのが、5人が自ら勝ち取った力でヒーローへと変身する点だ。桐生ダイゴを初めとしたキョウリュウジャーのメンバーは、機械の体を与えられた恐竜「獣電竜」との戦いで勝った者だけがヒーローへと変身できる。運命や偶然だけではなく、自分の力でヒーローへとなるという点に、三条作品ならではの熱さを感じずにはいられなかった。

 

 以上、『ダイの大冒険』を中心に作家・三条陸氏が手がけた仕事を紹介した。筆者が考える三条作品の魅力とは、誰もがヒーローになれ、全ての登場人物が物語に必要な存在であるという点である。

 最終局面でアポロ、まぞっほがヒーローになれた。翔太郎はハードボイルドに憧れる凡人であったが、諦めない姿勢はまさに「名探偵」そのものだ。こうした見逃しがちなキャラクターが持ついくつもの魅力を、ファンが気づくよう随所に散りばめてくれるのが三条作品の心憎い仕掛けなのかもしれない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3