2020年10月よりスタートしたテレビアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』が、いよいよ10月22日放送の第100話で最終回を迎える。同作の原作は1989年から1996年の約7年にわたって『週刊少年ジャンプ』で連載された漫画で、1991年にもテレビアニメ化や劇場アニメが制作された人気作品だ。
今回の再アニメ化に際して、キービジュアルで描かれた「ダイの剣」を目にした多くのファンが「最後までやってくれるのか?」と期待したはず。その理由はやはり、原作漫画で心をザワつかせた名言や手に汗握る熱い展開に他ならず、こうした数々の名シーンを「アニメで見たかった!」と長きにわたりファンが願っていたからだ。
そんな漫画『ダイの大冒険』は、作画担当の稲田浩司氏と原作・原案担当の三条陸氏によるもの。三条氏はこの夏アニメ化された『風都探偵』の脚本監修も手がけており、漫画やアニメの他、脚本家として多くの特撮作品に携わっていることでも知られている。関わる作品が多くのファンを魅了するのは、三条氏の描く物語の“熱さ”ではないだろうか。
■『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ドラクエの名を冠しながら新たな勇者像を示した名作
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は、国民的RPGとも称されるゲーム『ドラゴンクエスト』の名を冠しながら、主人公ダイを中心に“新たな勇者像”を示した作品でもあった。
たとえば、強敵から恐れをなして逃げ出してしまうポップは、当時の少年漫画読者からは嫌われても仕方のない存在だった。この件に関してコンビニ版コミックスに掲載された三条氏のインタビューによると、連載開始当初のポップは編集にも嫌われており、物語から退場させられかけたため「こいつガンバルから!」と説得したのだという。実際、元勇者や竜騎士など特別なメンツのなかにありながらポップだけが普通の人であり、そんな彼が数々の試練に打ち勝ち「大魔導士」へ成長したからこそ、読者は共感し励まされたはずだ。
作中にはダイだけではない“隠れた勇者”が多く、ノヴァの自己犠牲がロン・ベルクを動かし、チウの言葉がヒムや魔物を救っている。最終盤では「黒のコア」を凍結させるためにとそれまで物語の脇役だったものたちが奔走し、遂にはニセ勇者一行でさえ「本当の勇者」として活躍する。以前ダイが語っていた「勇者はひとりだけっていうきまりがあるわけでもないし」が最後で大きな意味として結ばれる。つまり、世界を救うためなら誰でも「勇者」になれるし、登場人物の誰もが「欠かせない存在」なのだ。
この、全キャラが集結する熱すぎるエピソードがアニメとして第98話「ダイの決断」として10月8日に放送された。SNSでは「このシーンを待っていたんだ!」「作画が神がかっている!!」などといった反応があったが、三条氏の過去のインタビューによると、「ダイの決断」は『週刊少年ジャンプ』読者アンケートで唯一1位を獲得できたエピソードだったとか。
90年代のジャンプ読者を大感動させた三条氏による『ダイの大冒険』が25年以上たった今、再び我々を魅了している。10月22日の最終回をどれだけ多くのファンが話題として取り上げるのか、SNSでの反応も楽しみだ。