■「後ろにも目をつけるんだ」(機動戦士Zガンダム)
これは『機動戦士Zガンダム』の第16話「白い闇を抜けて」で、共闘していたカミーユに言った言葉。元祖ニュータイプ主人公のむちゃぶり発言に「いや、そんなことできるのアナタだけですから……」というカミーユのぼやきが聞こえてきそうだ。
高機動の可変モビルアーマー「アッシマー」に苦戦するカミーユの前に、「気合がぼけているぞ! 聞こえているか!?」と独特のアムロ節で登場。さらにアムロは「カミーユ! 正面やや下。バズーカだ! 撃て!」とカミーユが把握できていないアッシマーの位置を特定し、攻撃を指示する。「え? どこだ? 見えない!」とうろたえるカミーユに「もっと下だ!」とスパルタ指導するアムロ先輩。その上アムロは、すれ違いざまに敵機のランドセルだけを斬って戦闘不能にするという神業まで披露し、カミーユを驚かせた。
このようにパイロットとしての実力差をまざまざと見せつけられたカミーユ。さらにアッシマーがカミーユのガンダムMk-IIの背後をとったとき、アムロはすかさず援護射撃。そのときカミーユに言い放ったのが、この「後ろにも目をつけるんだ」のセリフである。
結局、アッシマーの撃破というおいしいところまで持っていったアムロ。戦闘終了後、アムロとカミーユは握手を交わしていたが、もしかするとカミーユは自室で悔し涙を流したかもしれない。
■たかが石ころ一つ、ガンダムで押し出してやる!(機動戦士ガンダム 逆襲のシャア)
最後に紹介するのは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で、地球に降下を始めたアクシズをνガンダムで止めようとしたときのアムロのセリフ。ニュータイプのアムロらしいスケールのぶっ飛んだ言い回しである。
アクシズとは、ジオン共和国時代にアステロイドベルトにあった小惑星を開拓し、その後要塞化されたもの。内部には大きな店舗が立ち並ぶほどで、劇中で見てもかなりの質量を持った巨大な物体であることが見て取れる。
それを「石ころ」と言い放つアムロのスケール感が規格外すぎて驚かされるが、地球の引力にひかれて降下を始めた小惑星をモビルスーツで押そうという発想もすさまじい。思わずシャアですらドン引きしたのも納得である。
そしてサイコフレームの光に引かれるように両軍のモビルスーツが、アクシズを押しに来たのを見たアムロが「なんだ、一体どういうことなんだ」ではなく、「なんだ、どういうんだ」という独特な言い回しをしたのも、アムロ節というか富野節らしい味わい深さを演出していた。
ちなみに、このときブライト・ノアも「ラー・カイラムでアクシズを押すんだよ」という迷言を放ち、部下に制止されていたのも印象深いシーンだ。
ニュータイプゆえか、ふつうの人にはちょっと理解しがたい言い回しや個性的な表現が目立ったアムロ・レイ。少しでも気になった方は、あらためてセリフに耳を傾けて、彼独特の言葉の世界を堪能してみるのはいかがだろうか。