■セガサターンvsプレイステーションの次世代ゲーム機戦争

 そんな楽しすぎたメガドラ楽園時代から少し飛んで、1994年。11月にセガは32bitの次世代機セガサターンを発売。12月にソニーがプレイステーション(以下プレステ)を発売し、よく知られている次世代ゲーム機戦争が勃発する。3DOとネオジオCDもあったが、ここでは語らないことにしたい。NINTENDO64は2年後の発売だったため、事実上、セガサターンとプレステの一騎打ちとなったこの戦いは、いろいろすっ飛ばして書くとセガサターンが敗北した。

 いいゲームはたくさんあった。『バーチャファイター』が高い完成度で移植され、初期では『パンツァードラグーン』『クロックワークナイト』『シャイニング・ウィズダム』といったオリジナルタイトルも文句なしに面白かった。個人的に大好きだったのは、『異世界おじさん』で“197位”が話題になった『ガーディアンヒーローズ』になる。多種多様というか、騎士や魔導士、忍者などに加えて、破壊的に強いラスボスやモンスター、ガードもジャンプもできない一般市民まで混ぜこぜで戦うVSモードが最高に狂気で痛快すぎるものだった。

■プレステで「FF」「ドラクエ」発売のダブル衝撃

 その次世代ゲーム機戦争。『バーチャファイター2』のミリオンヒットもあり、むしろ当初はセガサターン優勢であったが、1996年2月、スクウェアの『ファイナルファンタジー』(『FF』)最新作がプレステ発売になるという衝撃ニュースが走る。しかもその発表がされたのは、当時黄金期真っ只中だった『週刊少年ジャンプ』誌上である。想像してみてほしい。ネットもない時代に、子どもも大人も愛読するモンスター雑誌で発表された瞬間を。

 次世代機を様子見していたユーザーは「次はプレステ!」となだれ込み、さらに翌年1月にはエニックスの『ドラゴンクエスト』最新作までプレステ対応になることが発表されたのだ。

 セガサターンを買っても次の『FF』『ドラクエ』は遊べない。国民的RPGのダブルコンボというエグすぎる攻撃は戦いの行方を決定づけ、セガサターンの前からプレステの背中は瞬く間に消えていった。実際に『ドラクエ7』が発売されたのは2000年のことであり、この発表は早すぎるものと言えたが、逆にセガサターンにトドメを刺そうとするソニーの気迫を強く感じるところだ。

 完全に勢いを失ったセガサターンだが、それでもセガを愛したユーザーの声は今も生きている。ネット掲示板のスレッド「セガサターンって何のソフトを遊ぶゲーム機だったの?」を覗くと、「天外魔境第四の黙示録。リグロードサーガやってるけどなかなか面白い」「VF2チャロンとブルーデスティニーの三部作」「ラングリッサー。おれはこれがやりたくて友人連中の中でただひとりサターンに走った」「サカつく2はサルのようにやってたな」「セガラリー。サクラ大戦」「サターンオリジナルのゲームならシャイニングフォース3」など、さまざまなコメントで賑わっている。きっと『FF』『ドラクエ』の暴力に負けず楽しんでいたのだろうと頷くような思いだ。ただ、後期になるにつれ他社開発のギャルゲー&18禁ゲーが増えていき、セガの硬派なゲームに惹かれて購入したゲーマー層には少々悲しい顛末になっていたのかもしれない。

 プレステとの勝負。実際は販売戦略、宣伝戦略、海外展開の違いなども大きく関わってのことになるが、プレステは売り上げ無視でガンガン値下げしていき、大資本力の力はエグいなあと思ったものだ。とは言え、セガサターンというライバルがいたからこそのプレステの大躍進であり、ゲーム史におけるセガサターン、ひいてはセガハードの功績は非常に大きなものである。

『異世界おじさん』でセガの名作が再び世に出ることはうれしい限りで、個人的にはドリームキャストで伝説を刻んだ『セガガガ』がいつかどこかで復刻されることを願うばかりだ。

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