セガ信者であるおじさんが主人公のテレビアニメ『異世界おじさん』の影響で、セガゲームがにわかに注目を浴びている。おじさんは人生の岐路にセガを選んだがために修羅の道を歩んだようだが、あながちこれをネタだと笑えないところがセガユーザーの悲しいところだろう。筆者はゲーム業界の片隅にいた関係上、ひと通りのハードをそろえていたが、周りの人間が『ファイナルファンタジーVII』発売で盛り上がっているとき、ひとり『SATURN FAN』を開き、かたくなに『グランディア』だけをプレイしていた知人とはちょっと疎遠になってしまったことがある。『グランディア』、いいゲームだったけどね。
セガハードはおじさんのような熱狂的信者を生む魅力を持ちながら、なぜゲーム機市場から淘汰されてしまったのか。おじさんが夢中になっていたセガの名機「メガドライブ」と「セガサターン」を振り返ってみたい。
■名作の宝庫、セガ信者始まりの名機メガドライブ
セガは1988年、任天堂のスーパーファミコンより2年先んじて16bit機の「メガドライブ」を発売している。実はこれ以前に「SC-3000」「SG-1000」「セガ・マークIII」というファミコンの対抗馬を発売しているのだが、多くのセガ信者の始まりはこのメガドライブからだろう。
10月27日には60本ものタイトルを収録した「メガドライブミニ2」の発売が控えている。そのため某ネット掲示板にはメガドラミニ2発売に沸くスレッドが立っており、それ以外にもメガドラユーザーだった人たちの声が数多く寄せられている。目を通すと当時の思い出が蘇るものばかりだ。
「いやーダライアスIIは神だな。よくあの容量に落とし込んだなとやるたびに感動」「おそ松からガンスターヒーローズまで生み出したハードって稀有だろうな」「ストライダー飛竜はメガドラ版でも不満が残る出来だったが、PS版とかPCエンジン版に触れたら贅沢過ぎる不満と強く再認識出来た」「ドラクエとかFFとかRPGの上位に入ってて、いやいやファンタシースターのほうが面白いし!って思ってたのはいい思い出」とまあ、このように、おそらく今は50歳を過ぎているであろうおじさんたちのメガドラトークにはなんだか微笑ましくなってくる。
筆者も思い出ゲームをひとつ挙げさせてもらうと、当時曲を聴きまくっていたあのマイケル・ジャクソンが監修した『マイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー』は強く印象に残っている作品だ。映画『ムーンウォーカー』を題材に、「スムーズ・クリミナル」「アナザー・パート・オブ・ミー 」などの名曲をBGMにマイケルが歌って踊って敵を倒していくというアクションもので、ドットで再現されたマイケルの動きと造形がとにかく素晴らしい。バブルス君もしっかり描かれ、まさに“ドット絵職人の芸術”と言えるゲームだった。権利の関係上だと思うが、今回のメガドライブミニ2に収録されていないのはとても残念で仕方がない。
もちろんこの他にもメガドライブの名作は数知れず、『ぷよぷよ』『エイリアンソルジャー』『ランドストーカー』『シャイニング・ザ・ダクネス』などなど、挙げれば切りがない。“伝説のクソゲー”認定され、別の意味で注目を集めた洋ゲーの移植作『ソード・オブ・ソダン』なんていうのに手を出してしまい、マジ金返せとコントローラを投げつけたのも今はいい思い出だ。
ちなみにお金と言えば、メガドライブの発売時定価は2万1000円。アルバイトができる高校生ならいざ知らず、子どもが買うには相当頑張らないといけない価格だった。おまけにソフトだってけっこう高い。メガドライブのためにお年玉や親へのおねだりを使い果たした子どもはその後のスーパーファミコンを買えず、ここがセガユーザーとして生きる岐路になったという人も多くいるのではないかと思われる。