■てんとう虫コミックスには未収録! 幻の最終回「ドラえもん未来へ帰る」

 最後に紹介したいのは、てんとう虫コミックスではなく、『藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 第1巻』に収録された「ドラえもん未来へ帰る」というエピソード。これは『小学四年生』(小学館)の1971年3月号に掲載された学年誌用の最終回になる。

 ある夜、のび太が寝ているとザワザワと人の気配が。目を覚ますと、壁に吸いこまれて消えていく大勢の人影を目撃した。その出来事をドラえもんに話すが、ドラえもんはなぜか浮かない表情でうわの空。さらに野比家では見覚えのない壁のラクガキがあったり、パパのライターがなくなったりと異変が連続する。

 そしてとうとうドラえもんやのび太のいる前に堂々と謎の人々が現れ、ガイドを名乗る責任者らしい人物が、タイムマシンで未来から時間観光ツアーでやってきていることを明かす。その後も時間観光ツアーの客たちの迷惑行為は徐々にエスカレート。しまいにはピストルを手にした未来の凶悪犯まで紛れこみ、タイムパトロールが出動して事なきを得た。

 こうして平穏が訪れたところで未来からセワシくんが現れ、「時間旅行規制法」が決定したことをドラえもんに告げる。これ以上、未来の人間が過去の人に迷惑をかけないように定まった規則で、過去にわたることが法律で禁止されたという。

 よってドラえもんも強制的に未来に帰ることになり、最初はのび太を励ましていたドラえもんも、別れ際には「のび太くんとわかれるのいやだあ」と号泣。セワシくんが無理やりタイムマシンで連れて帰るのだった。

 ほかのエピソードと違ってこの話の続きは存在せず、本当の意味で最終回のように感じてしまう悲しい回だ。最後のコマでのび太は、空になった引き出しを眺め「ただの引き出しにもどりました。でも……ぼくは開けるたびにドラえもんを思い出すのです」という切ない言葉で締めくくられている。

 ちなみに『藤子・F・不二雄大全集』には、このほかにも「ドラえもんがいなくなっちゃう!?」といった学年誌版の最終回も存在。今回紹介した最終回感のあるエピソードは、いずれもドラえもんとのび太の別れを軸に描かれていたのが印象的である。

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