■敵であり盟友でもあった名艦長「ブライト・ノア」

 最後に紹介するのは、宇宙世紀のガンダムシリーズの“影の主役”と言っても過言ではないブライト・ノアだ。シャアとブライトの関係は、アムロと同じく長いつきあいになる。

『機動戦士ガンダム』では、ブライトは地球連邦軍のホワイトベース艦長、シャアはジオン公国軍のパイロットとして何度も戦場で交戦。しかし、『機動戦士Zガンダム』ではエゥーゴのアーガマを指揮したブライトは、クワトロ・バジーナと名前を変えたシャアと手を組み、グリプス戦役をくぐり抜けた。

 そして『逆襲のシャア』では、ブライトは地球連邦軍独立新興部隊ロンド・ベルの旗艦ラー・カイラムの艦長兼艦隊司令として、ネオ・ジオンの総帥となったシャアと再び戦うことになる。

 時には敵、時には味方として戦ってきたブライトとシャア。このブライトのことを、シャアは高く評価している場面が多い。

 古くはファーストガンダムの第31話「ザンジバル追撃!」の中で、シャアは「木馬の奴、中々手慣れて来たな。艦長が変わったのか?」とブライトの指揮能力の向上を率直に褒めている。

『逆襲のシャア』では地球に降下を開始したアクシズに対し、ブライトは核ミサイルを使用して落下阻止を試みる。通常のミサイルに核ミサイルを混ぜる作戦でネオ・ジオンを撹乱し、この策にシャアは「やるな、ブライト!」と敵ながら名指しで褒めていた。

 余談ではあるが劇場版『機動戦士ZガンダムII 恋人たち』の中には、ブライトとクワトロ(シャア)のほっこりするシーンがある。ヘンケン艦長がカツを引き取る条件として、恋する相手エマ・シーンを一緒に同行させたいと申し出た場面のこと。

 クワトロが「(相手の)脈は保証できないのだぞ」とツッコむと、ヘンケンは「脈をつけるのが男の甲斐性ってもんだろ。心配するな、いいな?」と男らしく回答。これを聞いたブライトとクワトロは「いいな」と、若干うらやましそうに感心する場面があった。

 そんなほのぼのとしたやりとりを見ていると、ブライトのように年齢が近く、互いに認めあう存在がシャアのそばにずっといたなら政治思想や復讐心だけにとらわれることもなかったのかも……と思えてしまう。

 そして今回はあえて触れなかったが、おそらくシャア・アズナブルがもっとも高く評価していたのはアムロ・レイと、ララァ・スンという2名のニュータイプだろう。アムロは「生涯のライバル」、ララァは「母となってくれるかもしれなかった女性」とタイプは異なるが、シャアにとっては両者ともに別格の最重要人物だったのは間違いない。

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