■もはや再現不可能? アルフレッド・イズルハ&リディ・マーセナス

 最後に紹介するのは『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』でアルフレッド・イズルハ役、『機動戦士ガンダムUC」でリディ・マーセナス役を演じた浪川大輔さんだ。

『ポケットの中の戦争』を象徴する純朴な少年アルと、『ガンダムUC』で闇落ちすることになるエリート軍人のリディが同じ声優とは想像もできなかったが、そう感じてしまうのも無理はない。

 アル役を演じた当時、子役として活躍した浪川さんは、まだ12歳で声変わりもしていない本物の少年。あのアルのむじゃきさを表現した演技は、まさにあの時にしかできないものと言える。

 ちなみにその後『ポケットの中の戦争』のキャラが登場するゲーム作品などのアル役は比嘉久美子さんが演じているが、『ポケットの中の戦争』のDVD版やBlu-ray版のCMには成長したアルが登場し、こちらの声は浪川さんが演じている。

 そして『ガンダムUC』のリディ役は、浪川さんが大人になってからの役柄なので、知らなければアルと同じ声優が担当しているとは思えない。リディは、物語の序盤と終盤ではまるっきりキャラが変わってしまうが、そのギャップも含めて浪川さんの見事な表現力だった。

 ほかにも多数のガンダム作品に出ている浪川さんは、演じるキャラは暴走しがちで、あっけない最期を迎える事が多く、ご本人も自覚しているほどである。

 例を挙げると、劇場アニメにリメイクされた『機動戦士Zガンダム』のカツ・コバヤシ役は言うに及ばず、『機動戦士ガンダム00』で演じたミハエル・トリニティもガンダムから降りたところを銃殺されるという残念な結末。『機動戦士ガンダムAGE』では実質的なラスボスであるゼラ・ギンス役を演じたが、出番は最終話くらいしかなく、最後は暴走したところを和解した敵・味方両軍からボコボコにされるという不遇っぷりだった。

 長いガンダムシリーズの歴史の中には、今回紹介した以外にも兼役の例はたくさんある。ドモン・カッシュとイザーク・ジュールを演じた関智一さん、ゼクス・マーキス、ムウ・ラ・フラガ、ギム・ギンガナムなどを演じた子安武人さんなども有名だろう。ガンダム好きの皆さんにとって、意外に感じたガンダムの兼役と言ったら誰を思い浮かべるだろうか。

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