■歪んだ形で願いを叶える『Fate』シリーズ“冬木の聖杯”
『Fate』シリーズの“聖杯”は、あらゆる願いを叶えるとされる願望機だ。『stay night』や『Zero』などに登場する“冬木の聖杯”は、本物を模して作られた偽物とはいえ、それでも大抵のことは実現できる強大な力を持っている。
しかし第三次聖杯戦争にて、呪いそのものというべき存在の英霊・アンリマユを取り込んでしまったせいで、聖杯は汚染された。結果、願望機としての力は変わらずだが、“どんな願いでも歪んだ形で叶える”存在に変貌してしまったのだ。
簡単にいえば、誰が何を願ったとしても、それを叶える手段として破壊や殺しが選ばれる。たとえば“大金が欲しい”ならば、誰かを殺して奪った富を願った本人に与える。“この世で1番強くなりたい”と願ったならば、当人より強い人間を皆殺しにする……というように。願いそのものがどれほど美しいものだとしても、それを叶えるためには犠牲がつきものというわけだ。
作中では、世界平和を望んだ場合、争いの種となる人類を消す形で叶えられるという衝撃の事実が描かれていた。「汚染さえされていなければ」と思わずにはいられないが、そもそも原因となったアンリマユも、もとをたどれば“人間の悪意”によって生み出されたもの。そういう意味でこの聖杯は、人間の業を体現する存在だともいえるのかもしれない。