「たったひとつでいいから、なんでも自分の願いを叶えられればいいのに」。そんなふうに考えたことのある人は少なくないはずだ。だからこそ古今東西の物語には、あらゆる願いを実現する力を持った不思議なアイテム、あるいは“存在”がしばしば登場する。
願いを叶える系の存在は漫画やアニメにもよく出てきて、それらをめぐる戦いが物語のメインとなることも多い。しかしこの手の力はとんでもなく厄介なデメリットを併せ持っていることがほとんど……。リスクなしになんでも思い通りに……なんて甘っちょろいことは、フィクションの世界でもそうそう起こらないものだ。
そこで今回は、“どんな願いも叶える存在”の負の側面に注目し、その具体的な例をいくつか挙げていきたい。すべてを知ったうえでそれでも願いを叶えたいと思うか、そんな力が実在しなくてよかったと思うか……、それはあなた次第である。
※以下には各作品の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、本編をまだご覧になっていない方、意図せぬネタバレが気になる方はご注意ください。
■あらゆる存在の運命を狂わせる『犬夜叉』の“四魂の玉”
『犬夜叉』のキーアイテムである“四魂の玉”は、“どんな願いも叶える宝玉”として知られている。不滅の存在でもあるため、どの時代でもその力をめぐり、人間と妖怪との間で激しい戦いが繰り広げられてきた。善悪を問わず、手にした者の心によって汚れることも浄化されることもあるのが特徴だ。
砕けたかけらだけでも非常に強力で、ノーリスクで能力を強化したり、怪我や病を治したり、死者を蘇らせたりできてしまう優れモノ。これだけ聞けば、使い方次第であらゆる素晴らしいことが実現できるように思える。しかし作品終盤では、この宝玉が想像以上に厄介な存在だったことが明らかになるのだ。
実は四魂の玉はそれ自身が意思を持ち、“永遠に存在し続ける”という目的のために人間や妖怪の欲望を利用してきたという。所有者の欲望をエネルギー源としているため、その者の欲をかき立てるべく、“本当の願いだけは叶えない”という性質をも持っていた。
また自分の目的を果たすために所有者を利用し、想いを歪ませることさえある。実際、本作のラスボス的存在の奈落ですら、四魂の玉に運命を狂わされた存在だった。言い換えれば、この世界における真の黒幕がこの宝玉だったということ。皆が求めていたものがすべての元凶と言われると、なんだか切なく、やるせない気持ちになってしまう。