ガンダムシリーズは、戦争をテーマにさまざまな人間関係が描かれたアニメ作品。宇宙世紀の映像化作品だけでも17本を超えるバリエーションがあり、アナザーガンダムまで含めるとその世界はまだまだ広がり続けている。
豊富な登場人物が織りなす複雑な人間模様も作品の魅力の1つ。戦争が舞台なだけに、中には許されざる行動を起こす人物も存在。今回は、個人的に印象深い問題行動を見せたキャラクターをピックアップし、紹介していこう。
■1つの命令違反が、ガンダムとアムロ・レイの伝説を生んだ?
まず最初に紹介したいのは『機動戦士ガンダム』の第1話「ガンダム大地に立つ」に登場したジオン公国軍の新兵・ジーン軍曹だ。
シャアの部下であるジーンは、デニム曹長とともに偵察任務を受けてサイド7に潜入。だが、ガンキャノンやガンタンクといった連邦の新型モビルスーツを発見したことで功を焦り、命令を無視して勝手に攻撃を開始した。そのときジーンは「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」と言い放っており、出世欲に駆られたものと見られる。
この命令違反を犯したジーンはガンキャノンやガンタンクを破壊したが、その爆発音を聞いたアムロが退避カプセルを出て、結果的にガンダムに乗りこむことになる。つまりジーンが命令を無視して暴走しなければ、一民間人であるアムロがガンダムのパイロットにもならなかったとも考えられる。
もちろん、そのことだけで一年戦争の結末が変わったとも思えないが、アムロとガンダムの伝説は、ジーン軍曹の命令違反によって生まれたと言っても過言ではない。その意味では、重大な軍機違反だったと言えるだろう。
■熱血小隊長がまさかの敵前逃亡?
『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』は、一年戦争時の戦いを描いたOVA。極東方面軍のコジマ大隊に所属する第08MS小隊の隊長・シロー・アマダ少尉が主人公だ。
ジオンの非道な行いを憎むシローだが、第1話「二人だけの戦争」においてはジオン軍のテストパイロットであるアイナ・サハリンと邂逅。二人で生き残るために協力することに。これがきっかけで、シローとアイナは敵軍同士でありながら恋愛感情を抱いていくのだ。
小隊長としてのシローは新米ながらも熱い男。その一方で敵軍のアイナとはひかれあうという、スパイと思われても不思議はない状況。そして軍と自身の恋愛を天秤にかけ、最終話「震える山(後編)」では戦闘行動中にもかかわらず、シローは「俺は……軍を抜ける」と唐突に告げた。
シローは「逃げるつもりはない。アイナを止める」とアプサラスで出撃したアイナを止める目的だと部下に説明したが、小隊員からすれば敵前逃亡そのもの。ヘタをすれば小隊ごと銃殺刑に処されてもおかしくない暴挙に小隊員はあきれ、怒りを見せた。
とくにカレン・ジョシュワに至っては、「シロー・アマダ、あんたはあたしが今まで会った最低の兵隊だよ」とまで言い放っている。そもそもシローとアイナの個人的な関係など知ったこっちゃない連邦兵からすると、とんでもない利敵行為に見えたことだろう(ガンダムEz8も拝借したままだし)。
1年戦争終結後、第08MS小隊のその後を描いた『機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ラスト・リゾート』では、軍を除隊したミケル・ニノリッチが、行方不明になった元上官のシローを捜索。軍人としては最低な行動をとったシローだが、人としては愛されていた男なのだ。
余談ではあるが、この作品のラストシーンでシローと彼の子を宿したアイナが山奥で暮らしている場面が流れる。セリフこそないが、全ガンダムシリーズを通しても最高に幸せそうなラストシーンだった。