『ブルーピリオド』“アート系スポ根受験物語”の心に刺さるアツい名言3選! 芸術の秋を堪能したい人におすすめの画像
『ブルーピリオド』第1巻(アフタヌーンKC)より

 暑かった夏が終わり、いよいよ秋の始まりを感じる今日この頃。今回は“芸術の秋”をテーマに美術を題材にした漫画、山口つばさ氏の『ブルーピリオド』について紹介したい。

 ストーリーは、ある日、絵を描く喜びに目覚めた主人公・矢口八虎が東京藝大合格を目指して全力を尽くす青春物語だ。“アート系スポ根受験物語”というキャッチコピーもある本作はアツい名言の宝庫で、登場人物それぞれが自分の“好き”に本気で向き合う姿が描かれているからこそ、心にぐっとくる言葉が数多くある。

 今回はそのなかから、作品序盤(第1〜4巻)に登場する名言を厳選してお届けしたい。

■「あなたが青く見えるなら りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」

 まず紹介したいのが、第1巻第1話で登場したこのセリフ。美術の授業中、“私の好きな風景”という課題を出された八虎は、当初は適当な絵でやり過ごすつもりでいた。しかし美術部に所属する森先輩の絵を偶然見かけ、少し美術に興味が湧き、自分が好きな“早朝の渋谷”を描きたいと淡く思うようになる。

 そんななか、八虎は森先輩と出くわし、思わず「早朝の渋谷の景色って見たことあります?」と話を振ってしまう。「渋谷なんだけどその…静かで青いんすよ」と照れながら語る八虎に対し、森先輩は、“昔 先生に言われた受け売りだけどね”と前置きしたうえで、「あなたが青く見えるなら りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」と伝える。

 とてもシンプルだが、人それぞれの世界や想いを尊重するあたたかい名言だと思う。八虎はこの言葉をきっかけに、自分にしか描けない“私の好きな風景”を完成させる。そして美術の世界に目覚めて藝大を目指すようになるのだから、この言葉が八虎の人生にとってすべての始まりだったといっても過言ではない。

■「本で読んでもわからないから面白いんだ 理論は感性の後ろにできる道だ」

 八虎は努力の天才だ。目標に向けて最短距離で努力を重ねられる稀有な才能を持っているからこそ信じられないスピードで上達するし、その描写に説得力もある。そんな彼は美術に打ち込む過程でいくつもの“気付き”を得て、すぐに咀嚼し、自身の血肉としている。

 たとえば、第1巻第4話のシーン。予備校に通い始めた八虎は、慣れない油絵の具の使い方に悪戦苦闘することになる。思ったように色を作れなかったり、重ね塗りしようとしたら下に塗ったぶんがズルむけたりと、なかなかうまくいかないのだ。

 しかし彼はそこで落ち込むのではなく「そりゃそうか 入門書見たって完璧に使いこなせるわけないよな」と開き直り、そして「本で読んでもわからないから面白いんだ 理論は感性の後ろにできる道だ」と続ける。その後は道具の使い方云々にこだわり過ぎず、遊ぶくらいの気持ちで描くことを選んだ八虎。きらりと光る“気付き”を得た瞬間だ。

 新しいことを始めるとき、ルールや理論にとらわれてガチガチになってしまった経験がある人は少なくないはず。しかしまずは、とにかく柔軟に自由に楽しんでやってみることが大切だと、あらためて思わせてくれる名言だと思う。

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