■「楽しんで作ってそれ否定されたら 立てなくなりそうで怖いんだよ…!」

『ブルーピリオド』の魅力のひとつが、自分の“好き”に本気で向き合うことの怖さ、苦しさをも真正面から描いている点だ。なかでも、第4巻第15話に出てくる八虎の言葉は、本気で“好き”に向き合い続ける人間にしか言えないセリフだと感じた。

 彼は受験直前、予備校の先生に“楽しむ力”がまだ足りないと言われ、落ち込んでしまう。そして友達に対し「楽しむってさ すげーホンキな気持ちじゃん 楽しんで作ってそれ否定されたら 立てなくなりそうで怖いんだよ…!」と、本音をぶちまけた。彼が真剣に美術と向き合っているからこそ沸き起こる葛藤が、痛いほどに伝わってくるシーンだ。

「好きなことをやっている」というとどうしても“楽しい”イメージが先行するが、実際は好きで本気だからゆえ、何もかも嫌になってしまうくらいつらいことだってある。そんなとき、八虎の「楽しむ=本気な気持ち」の発想を取り入れられたら、つらさや苦しさも新鮮に思えるかもしれない。

 

 美術の道を選んだ八虎が、悩んだり失敗したりしながら成長していく姿を描いた『ブルーピリオド』。今回は第1巻から第4巻までにフォーカスしたが、巻数が進むごとにストーリーはますますアツくなり、心揺さぶる言葉もバンバン出てくる。八虎以外の登場人物も掘り下げられていくので必見だ。

 本記事を読んで少しでも興味を持ってもらえたなら、ぜひ本編をご覧いただきたい。今まさに何かに打ち込んでいる人にはもちろん、その経験がある人にもおすすめの作品である。

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