■同じ声のキャラが同席してカオスとなるエピソードも

 90年代に社会現象を巻き起こした『美少女戦士セーラームーン』でも、言われないと絶対にわからないキャラの兼ね役がある。それは無印と呼ばれるアニメ1期の敵「ダークキングダム」のリーダー格・クインベリルと、主人公の月野うさぎの相棒の黒ネコのルナだ。

 圧倒的な威厳のある、まがまがしい女王のクインベリルと、しっかり者だがおちゃめで愛らしいマスコットキャラのルナが同じ声優とはなかなかに信じがたい。当時は別撮りした声を編集するのではなく一気に収録をしていたため、声優を務めた潘恵子は、2人が連続して登場する際に役の切り替えが難しかったことを過去のインタビューで語っている。

 ほか国民的作品だと『名探偵コナン』で高木渉が小嶋元太と高木刑事の声を務めているのは有名だろう。これはもともと元太の声優を務めていた高木がモブキャラクターとして高木刑事の声をあて、そのまま彼のキャラが原作漫画にも逆輸入される事態になったという経緯がある。まさかの大出世を果たした彼は、ついに劇場版最新作『ハロウィンの花嫁』でメインキャラとなった。

 同様に『サザエさん』にも同一声優の起用がある。「磯野く〜ん」と特徴的な声色でマスオに話しかける姿が印象的な、マスオの同僚・アナゴさん役の若本規夫がそうだ。若本は花沢さんの父親も演じている。2021年5月にはアナゴさんと花沢さんの父が同時に同じ話に出演するという夢の共演があった。なお、このとき同席していたアナゴさんの妻と花沢さんも同じ声優(山本圭子)が声を当てているので、これはなかなか貴重な回だったようだ。

 ここまでさまざまな声優のスゴさを紹介したが、兼ね役の数でいえば『彼岸島X』の山寺宏一にかなうものはないだろう。山寺は同作最終話で50役もの役のかけもちをした。3分という短いアニメながらズラリと並ぶクレジットのキャスト欄には全キャラに山寺宏一の文字が。後にも先にもこれほどレアな光景は見られなさそうだ。

 あらためて声優の技術力に感動する、さまざまなキャラクターたち。今後はクレジット欄の隅まで注目してみると面白いかも!

  1. 1
  2. 2