■重要な役割を担い、多才だった司令「マ・クベ」

 キシリア配下の突撃機動軍大佐であるマ・クベ。ただの骨董品が好きなおじさんのイメージがあるが、彼はジオンの勝敗を左右する重要なポジションにいた。

 ジオン公国は「国」と謳っているものの、スペースコロニーの1つであり、そのもっとも致命的な弱点が「資源がないこと」。とりわけ戦争を継続するために必要な資源が不足していた。そのためジオンは地球のオデッサで鉱物資源を採掘し、それを宇宙に送っていたと考えられ、それを一手に統括していたのが司令のマ・クベである。

 第22話「マ・クベ包囲網を破れ!」の中で、マ・クベは採掘基地が攻撃されたことにイラつく。基地がやられたことよりもボーキサイトの生産性が下がったことにイラついているところが彼らしく、それは資源開発および調達担当としての有能さの表れと言えるだろう。

 キシリアのライバルであるドズル配下のランバ・ラルを積極的に支援しなかったり、南極条約で禁じられた水爆ミサイルを発射したりと、姑息な行動が目立つマ・クベだが、彼自身「ジオンはあと10年は戦える」と豪語したとおり、彼が宇宙に送った資源には大きな意味があったはずだ。

 それにテキサスコロニーでは、マ・クベはギャンを駆ってガンダムと戦う。巧妙な策を弄して優位な戦いに引きずりこみ、近距離戦ではアムロを相手に意外なほどの好勝負を繰り広げた。結果的にガンダムに敗れ、シャアには「付け焼き刃に何ができる」と揶揄されたが、司令官としてだけでなくパイロットとしても非凡であることも示した。

 ザビ家内部の派閥争いなどに影響を受けなければ……補給の重要性を知るマ・クベならもっと大局を見て事を進められたのでは、と思わされた人物である。


 もちろん今回紹介した以外にも、ジオンにはさまざまな有能な軍人が登場する。そうした逸材を適材適所でうまく活用できなかった点も、結果として連邦に敗れた一因なのかもしれない。

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