■顔面が消えていく…「足跡の怪」

 救いがなかったり後味が悪かったりする話が多い2期『ゲゲゲの鬼太郎』の中で、この43話「足跡の怪」は描写のグロテスクさもあいまって怖いと語り継がれているエピソード。なお原作漫画は鬼太郎が登場しないわずか8ページほどの短編。男たちにひたすら死が訪れるという話で、これをアニメでは1話に膨らませている。

 ある村で三郎という少年の両親が神隠しに合い、村長が鬼太郎に助けを求めるところから物語は始まる。鬼太郎は仲間に声を掛け、三郎の両親の捜索を開始する。そこで分かったことは、何者かが立ち入り禁止の「いらずの山」に入山し、妖怪「タイタンボウ」の石を隕石か何かと思い研究のために削り取って持ち帰った、ということだった。

 このエピソードが恐ろしいのは「タイタンボウ」の祟りによって、人間の顔面が溶けて無くなってしまう描写。祟りにあった山田という人物は、小指が溶け、そして右耳、右目、鼻が次々とくぼんで消え、身体部位が徐々に溶けて無くなっていき、最後は服だけを残して全身消えてしまう。このシーンが、鬼気迫るほど恐ろしく描かれているのだ。

 ねずみ男は物語の終盤「だいたい人間って奴はね、この世には科学で説明出来ないことがあるってことを知らなすぎるね」と呟いている。そして「昔からタブーとされているものを守ってこそ、皆が幸せになれる」とも続けている。人間の傲慢さやエゴが招いた末路なのかもしれない。なお6期ではこのエピソードが「霊障 足跡の怪」として復活。現代のコンプライアンスにあわせてか、顔面崩壊のシーンは黒く影が落とされているが、それでも恐怖度はかなりのものだった。

 ジメジメとした雰囲気の内容が多い2期『ゲゲゲの鬼太郎』。だからこそ恐ろしく、鬼太郎による教訓が子どもたちにも伝わりやすいのではないだろうか。水木しげるさんが遺した偉大なる『ゲゲゲの鬼太郎』の世界。ぜひ原作漫画に近い、湿気のあるおどろおどろしい雰囲気を味わって欲しい。

  1. 1
  2. 2