■あの名モビルスーツや名ゼリフも出番なし!?

 劇場版でカットされたエピソードがある関係で、テレビ版に登場したモビルスーツや、モビルアーマーが劇場版には登場しないということもある。第18話「灼熱のアッザム・リーダー」がカットされたため、テレビ版に登場したモビルアーマー、アッザムは劇場版には登場しない。

 テレビ版の第37話「テキサスの攻防」ではアムロのガンダムとマ・クベが搭乗するギャンがテキサスコロニーで激闘を繰り広げた。しかし劇場版3作目『めぐりあい宇宙編』のテキサスコロニーには、マ・クベとギャンが登場しない。そのためテレビ版第37話で戦死するはずのマ・クベは生存。死に際の名言「ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ。あれは、いいモノだ」も劇場版では聞くことができないのだ。

 このほかにも、第32話「強行突破作戦」に登場するザクレロ、第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」のブラウ・ブロを始め、尺の都合で劇場版に登場できなかった機体は数多く存在する。

■劇場版での作画変更と新規作画の追加

 テレビ版と劇場版を比較した際、残念ながらカットされたエピソードや機体が目立つ。しかし一方で劇場版のほうに追加された新規カットも存在する。とくに、劇場版3作目『めぐりあい宇宙編』は、140分の約7割が新規作画で構成されている。

 新規作画の分かりやすい例として挙げられるのが、ホワイトベースのクルー・セイラの入浴シーンだろう。劇場版のセイラの裸体はテレビ版と比べて露出が多く、ドキッとしたファンも多いはず。また、テレビ版ではこの入浴シーンは第37話『テキサスの攻防』に登場するが、劇場版ではエルメスに奇襲攻撃を受ける前へと変更されていた。

 それにともないテレビ版の「命拾いの後の、いいお風呂だったのに」というセイラのセリフは、『めぐりあい宇宙編』では「半舷休息のはずなのに」に変わっている。

 このセリフ変更からも分かるように『めぐりあい宇宙編』では、テレビ版よりも戦争をリアルに表現した変更点が見受けられる。テレビ版でハヤトの搭乗する機体は、下半身がキャタピラのガンタンクだったが、人型のガンキャノンに変更。これは宇宙空間の戦闘でキャタピラは実用的ではないという理由からだ。また合体・分離をするGファイターはリアルさを重視し、戦闘機型のコア・ブースターに変更されている。


 このようにテレビ版と劇場版には、大きい部分から小さい部分までたくさんの違いが存在する。今回紹介しなかった中では、ガンダム作品を代表する名曲として知られる『哀 戦士』や『めぐりあい』といった劇場版ならではの主題歌の存在も挙げられるだろう。

 いろんな違いはあるが、テレビ版、劇場版ともに見どころは十分。『機動戦士ガンダム』を深く楽しみたいときはテレビ版、短時間で簡潔に楽しみたいときは劇場版を見るのがベストだろう。そしてできることなら、両作品の違いをじっくり見比べてみるのも『機動戦士ガンダム』のひとつの楽しみ方と言えるかもしれない。

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