ごはんをもりもりと美味しそうに食べる大食いの人は、見ていて気持ちがいい。とくに信じられない量を幸せそうに頬張っている姿を見ていると、いろんな意味でこちらもおなかいっぱいになってきそうだ。漫画の世界でも、大食い属性のキャラクターは一定数登場。中でも細身の女の子が実はよく食べる……というパターンは意外とあるように思われる。
そこで今回はそんな食いしん坊な女の子キャラの中から、常軌を逸した食欲を誇る人物を数名紹介していく。フィクションならではの表現にもぜひ注目してほしい。
■団子をおかずに白米を食らう!『銀魂』神楽
空知英秋氏の『銀魂』は、“万事屋銀ちゃん”の面々を中心に繰り広げられる、笑いあり涙ありの物語。万事屋の一員であるヒロイン・神楽は、炊飯器から炊きたてごはんを直で食べたり、数人前の料理をぺろりと平らげたりと、とんでもない食欲を誇るキャラクターとして知られている。好物はたまごかけごはんにお茶漬けと質素なものだが、なにせ食べる量が半端ではないので、万事屋のエンゲル係数は爆上がりだ。
彼女の食い意地の張りっぷりがわかる場面は多々あるが、筆者の中で印象深いのは、原作コミックス第13巻に収録の第109訓「華より団子」。銀時がよく行く寂れただんご屋・魂平糖が店の存続を懸け、近所にできたライバル店・餡泥牝堕(アンドロメダ)と競うことになるというエピソードだ。勝負方法はお互い団子を作って無料で提供し、どれだけの皿がさばけるかで勝敗を決めるといういたってシンプルなものである。
餡泥牝堕は江戸一番ともいわれる人気店で、勝負が始まった途端、あっという間に客が殺到する。一方の魂平糖には銀時と新八、神楽の3人しかやってこない……のだが、彼らは人数の差をものともせず、驚異的なスピードで団子を平らげていく。しばらく何も食べなくても良いように、と団子をむさぼり食う姿がなんだかちょっと切ない。
どんどん皿を積み上げていく3人の姿は圧巻だが、神楽にいたってはどこから持ってきたのか、団子をおかずにして白米を食べ始める始末。彼女は銀時と新八がダウンしてからも、「前菜の時間はおしまいだヨ」と余裕をかましていた。
さらにその後、驚きの光景が繰り広げられる。新八が団子を串から取り外し、銀時がそれを神楽の口の中に向かって投げ(食べ物を投げてはいけない)、神楽がそれを噛んでは飲みこみ――と繰り返すことで次々と皿を空にしていくのだ。もはや何の大会なのか謎である。
しかも神楽は、合間に白米を食べることもちゃんと忘れない。最終的には不慮の事故で脱落してしまうのだが、それがなければきっと延々と団子と米を食べ続けたことだろう。
万事屋のバツグンのコンビネーション、そして神楽の驚異的な胃袋があるからこそなせる神業に、初めて見たときは思わずあ然としてしまった。団子で米を食べる、突き詰めれば米で米を食べるというのも、炭水化物を愛する神楽らしい。タダ飯(?)に目が眩んだのか、珍しく新八がツッコミとして一切機能していない点も興味深いエピソードである。