2018年から2020年まで第1部が『週刊少年ジャンプ』にて連載され、今年10月からはMAPPA制作によるテレビアニメが放送予定となっている藤本タツキ氏による漫画『チェンソーマン』。今年7月からは第2部となる「学園編」が「少年ジャンプ+」でスタートしているが、長らく姿を見せていなかった主人公・デンジが8月31日公開の6話目にしてようやく登場となった。
第1部で活躍したキャラがどう関わってくるのか、今後の展開が気になっている読者も多いと思うが、筆者が特に楽しみなのがコベニの登場だ。第1部に登場した東山コベニは、いつもオドオドしている新人デビルハンター。いかにもすぐ死んでしまいそうなキャラだったが、意外にも戦闘能力が高く、しかも悪運も強く、最後まで無事生き残ることとなった。
幸薄そうな雰囲気通り、あまり恵まれない環境にあるらしい彼女は、作中でも何度か散々な目にあっている。そこで今回は、読むと思わず同情してしまう、コベニの不憫なエピソードを振り返っていきたい。
■言動の端々からにじみ出る“恵まれてない”感
第2巻で新人デビルハンターとして登場したコベニ。幼さの残る顔立ちと小柄な体型が印象的な少女で、いかにも弱そうに見える。13話から始まる「永遠の悪魔」編では、終始オドオドしまくり、ほぼすべての登場コマで顔に汗(冷や汗か?)が描かれている。さらに悪魔の力でホテルに閉じ込められ、外に出る方法がなくなった際には、真っ先に心が折れ泣き出してしまっていた。
その際の会話でコベニは、親から言われてしかたなくデビルハンターになったことを明かしている。実はコベニ、作中で9人姉妹であることが明かされており、さらに兄までいるという大家族の生まれなのだ。本人の言葉によれば、彼女は優秀な兄を大学に行かせるために働かされ、自分が稼いだお金はほとんど家に入れているらしい。
コベニの育った家庭環境があまり良いものでないことは、その後の彼女の言動からも察せられる。なんてことない居酒屋の料理に「こんなおいしいご飯はじめて食べました…!」と感動したり、ソフトクリームを食べながら「人生で2回目です!」と言ったり。しかも1回目のソフトクリームは小学校の頃、誕生日に買ってもらったのだが、はしゃぎすぎて転んで落としてしまったそうだ。新しいのは買ってもらえなかったろうし、きっとものすごく怒られただろうな……と想像すると、思わず切なくなってしまう。
また物語終盤で立場が危うくなり、家族と一生連絡がとれないだろうと言われたときには、「(お父さんとお母さんと)離れる理由できてよかった…」ともこぼしていた。真っ先に出てくる言葉がそれというあたり、彼女の抱える闇がほんの少し垣間見える。