■アムロ体感のグフの性能はザクの20%増し

 ザクとグフの性能差を考えるとき、より明確で面白い検討材料が作中にある。第17話「アムロ脱走」にて、アムロは鹵獲(ろかく)したザクの性能データから戦闘シミュレーションを作っており、このとき、敵の新型グフに対しては「ザクの性能より20%増しでやってます」と話しているのだ。それが実際に戦って感じたアムロの肌感覚なのだろう。アムロがシミュレーションするモニターにはガンダムに飛び蹴りを食らわすシャアザクが映っているので、それとの比較も行っていたのかもしれない。

 しかし、直後の戦闘。「なんでもかんでもガンダムで戦わせればいいってものじゃない」などと一端に用兵を語ってガンタンクで出撃したアムロだが、「ザ、ザクめ。計算より速いぞ」と唸り、逆に苦戦を強いられている。砲手を担ったハヤトの腕が未熟だったという見方もあるが、その後ガンダムに乗り換えたグフとの戦闘でも、「コンピューターのパターンだけでは追いつけない。データが甘いのか!?」と、やはり苦戦するハメになっている。

 結局アムロが出した結論は、「完全に失敗だ。ザクもグフも、操縦者とか環境でまるっきり動きが違っちゃうってことか……」というものだった。それはそうだろう。ガンダムだって、だからこそアムロに任されているのだから。当たり前のことすぎる前提にアムロのどこか抜けている部分を見た瞬間だが、これらを総合的に見て、少なく見積もっても基本性能はザクの20%増し。砂漠などの得意環境下での白兵戦ではそれ以上、というのがグフの妥当な性能になるだろう。

 とはいえ、いくらグフがザクとは違う新型機と言っても、ジオンがガンダムに比肩するモビルスーツの開発に成功したのは一年戦争の終盤、ゲルググでのことだ。グフはさすがにそこまでの性能になく、ガンダムを追い込めたのはそれこそアムロが言う「操縦者による動きの違い」になる。

 事実、ガンダムのジェネレーター出力は1380KWであり、グフのはるか上を行っている。グフにはないビーム兵器を装備し、運動性も装甲の頑健さも比べ物にならない。この機体ハンデで奮戦できたのは、ひとえにラルの卓越したモビルスーツ戦技の成せる技と言えるだろう。覚醒前で機体性能に振り回されがちなアムロに対し、グフの有利不利を知り、機体を制御する歴戦のラル。敗れたとはいえ、“青い巨星”の名に恥じない戦いぶりだったのは間違いない。

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