■大判スケッチブックに“知的欲求&アイデアメモ”がびっしり!

小説の設定や人物相関図が細かく書き込まれた国生さんのスケッチブック

 初回の投稿は2021年7月。それから一気に第1章(92話)、第2章(78話)を同年中に完成させると、今月5日に第3章(42話)を書き終え、長い物語を完結させた。この1年以上、実に2日に1話を超えるハイペースで更新し続けた計算だ。

「誰かに読んでもらいたいという気持ちは本当になくて、ただただ自分のメモのために」と振り返った国生さん。それにしても忙しい日々の中、いつ小説を書いていたのか?

「朝、お散歩に行って、猫のお世話をして、コーヒーを飲んで。音楽や映像を流しながら書き始めるのが10時くらい。楽しくて。今、凝っているアイスクリームとスイカをおやつにしたりして。うちの猫ってお腹が空くと近寄ってくるんですが、それが大体17~18時。で、なんとなくひと段落。一回休んでしまうと『今日はもういいかな』って」

 おっとりとした愛らしい口調で語ったが、家にいる日には、愛猫から晩ごはんの催促をされるまで7〜8時間も原稿と向き合っていたというからすごい。

 おまけに、その執筆スタイルは聞けば聞くほどユニークだ。

「おうちにパソコンがなくて、iPhoneとiPadで書くんです。初めはキーボードで文字を打ったこともなかったんですよ。文字変換にも苦労して、『出演』って書きたいのに違う漢字ばかり出てくるから、『出口』『演じる』と打ってくっつけたり。イメージすることに文字を打つ手が追いつかず、そのうち忘れて、次のことに思考がいってしまって。そしてまた、『何だっけ?』となったりします(笑い)」

「小説のメモ書きは大判のスケッチブックで……」とバッグから取り出したのは、2冊のスケッチブック。見せてもらうと、溢れんばかりの文字や相関図がズラリ。そこからは、アイデアと好奇心がとめどなく湧き出ている様子がうかがえる。

「私、高校は陸上の特待生で受験をしていなかったし、その後はおニャン子でしたから、ちゃんと勉強をした経験がなくて。でも、今は気づきの毎日です。文字には意味があるんだなとか、点はどこで打つんだろう、『いる』か『いた』かで感覚がちょっと違うんだなとか。iPhoneで言葉を調べて、理解して、文章を書いて。形になっていくのが楽しかったんですね」

 そうして、書きつづった国生さんの“知的欲求のかたまり”——。それが、全212話、67万文字を超える長編大作なのである。

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