■『カイジ』で迫力ある演技を見せた天海祐希

 原作での男性キャラを女性に改変することは少なくないようだ。福本伸行氏による『カイジ』シリーズでは、原作初期から登場するコワモテの法外な高利貸し・遠藤勇次が、映画第1作目となる『カイジ 人生逆転ゲーム』で遠藤凛子と名前と性別を変え、天海祐希が演じた。同作ではメインとなる女性キャラが少ないため、天海の迫力ある演技も相まって高い評価を得ていた。

 同じく、ノスタルジーを感じる映画として高い評価を得た2005年公開の『ALWAYS 三丁目の夕日』にも性別変更があった。堀北真希さんが演じた、東北から集団就職した鈴木オートの従業員・星野六子がそうだ。

 真面目な六子は作品の中でも応援したくなる人物として描かれていたが、原作漫画では彼女は星野六郎という名前の天然パーマで冴えない青年だった。六郎も基本的には映画同様真面目な働き者だが、恋愛に夢中になりやすく、作中ではたびたび失恋シーンが描かれるという、映画しか見たことのない人にとっては「意外」と思われるキャラクターである。

 このほかにも、2011年にフジテレビ系で放送されていたドラマ『カバチタレ!』では主人公の田村勝弘(ドラマ版では希美という名前になった)と栄田千春が女性に置き換えられ、それぞれを常盤貴子深津絵里が演じていた。

 なお、諫山創氏による『進撃の巨人』に登場する調査兵団分隊長のハンジ・ゾエは最後まで作中で性別が明かされなかったが、実写映画ではハンジを石原さとみが演じたことで、明言こそされていないもののファンの間では「ハンジはやはり女性だったのか」という議論が飛び交った。性別が謎なままであることが魅力でもあるキャラクターに、確固たる設定がついてしまうことで少し残念に感じた読者もいるかもしれない。

 いずれにしても、性別の変更がなされることで作品に新しい風が吹くことは必至だろう。作品のパラレルワールドだと思って見れば、作品の新たな魅力を発見できるかもしれない。

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